令和3年の離婚申し立てはなぜ増加?コロナの影響?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ



令和3年の離婚申し立てはなぜ増加?コロナの影響?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。最高裁判所が開示した令和3年の離婚に関する原因別データを令和2年と比較してみたところ、増加に転じているのこが判明しました。一体なぜ増加したのでしょうか?コロナの影響はあるのでしょうか?まとめてみました。



🌸はじめに

最高裁判所では毎年離婚に関する原因別データを開示しています。


これは「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」というデータで、申立人が離婚の動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計しています。


そこで、令和3年の離婚原因と令和2年の数値を比較してみたところとても興味深い結果となりました。


コロナ禍の中で離婚原因にはどんな変化があったのか?


まとめて考察してみました。


※出典:「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」

令和3年

https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/597/012597.pdf

令和2年

https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf


(注)申立ての動機は,申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計。



🌸男性の申立ての傾向


【令和3年離婚原因別ランキング男性】

※( )内は令和3年と令和2年を比較(令和3年/令和2年

男性の申立て件数合計17,160件←15,500件(110.7%)


1位「性格の不一致」10,161件←9,240件(110.0%)

2位「精神的に虐待する」3,561件←3,159件(112.7%)

3位「異性関係」2,178件←2,132件(102.2%)

4位「家族の親族と折り合いが悪い」2,082件←1,964件(106.0%)

5位「浪費する」2,060件←1,883件(109.4%)

6位「性的不調和」1,919件←1,740件(110.3%)

7位「同居に応じない」1,511件←1,359件(111.2%)

8位「暴力を振るう」1,477件←1,454件(101.6%)

9位「生活費を渡さない」785件←686件(114.4%)

10位「家庭を捨てて省みない」781件←764件(102.2%)



🌸男性の申立ての分析


令和3年の離婚申し立ては、令和2年を上回る件数となりました。


婚姻も離婚も毎年漸減している中、離婚申し立ても減少傾向が続いていましたが、令和3年に大きく増加に転じているが注目されます。


その中で特に目を惹くのは、「精神的に虐待する」112.7%「生活費を渡さない」114.4%の2つの項目の増加が激しいことです。


一方、逆に微増であったのが不倫や浮気である「異性関係」で102.2%となっています。


これらの数値からはまず推測されるのは「コロナ禍」の影響です。


コロナにより価値観の違いがより鮮明になり、また、コロナ禍での直接的な収入減、リモートワークなどにより在宅時間が増えたことによるストレスなどに起因して、「精神的に虐待する」「生活費を渡さない」の項目が増加したのではないでしょうか。


一方比率の上で「異性関係」が少な目なのは、同じくコロナにより出社や懇親会などが減少し、人との接触頻度自体が減ったことが要因として考えられます。



🌸女性の申立ての傾向



【令和2年離婚原因別ランキング女性】

※( )内は令和3年と令和2年を比較(令和3年/令和2年

女性の申立て件数合計47,725件←43,469件(109.8%)


1位「性格の不一致」17,743件←16,304件(108.8%)

2位「生活費を渡さない」14,832件←13,235件(112.1%)

3位「精神的に虐待する」12,296件←10,948件(112.3%)

4位「暴力を振るう」9,162件←8,576件(106.8%)

5位「異性関係」6,574件←6,505件(101.1%)

6位「浪費する」4,124件←4,020件(102.6%)

7位「性的不調和」3,021件←2,808件(107.8%)

8位「家庭を捨てて省みない」2,960件←3,013件(98.2%)

9位「酒を飲み過ぎる」2,835件←2,618件(108.2%)

10位「家族の親族と折り合いが悪い」2,789件←2,674件(104.3%)



🌸女性の申立ての分析

女性の申し立ても男性同様増加しました。


特に伸び幅が大きかった項目も男性と同じで、「生活費を渡さない」112.1%、「精神的に虐待する」112.3%の2つが突出しています。


これらも男性同様、コロナによる影響なのではないかと考えられます。


逆に伸びが最も少なかったのは「異性関係」101.1%、「浪費する」102.6%であり、これもコロナにより人と出会いや飲食の機会が減少したことに起因しているのではないでしょうか?


【3か月まで5万円!フェリーチェ法律事務所の離婚サポートプラン!動画が再生されます(音声あり)】



🌸分析結果と今後の傾向予測

令和3年の申立て件数合計は64,885件であり、令和2年の58,969件の1.1倍となっています。


令和3年の男女比は、夫17,160件、妻47,725件であることより2.78倍となり、過去から大きくは変わらず女性の申立てが圧倒的に多くなっています。


一方離婚件数は、令和3年が184,384件、令和2年が193,253件と4.8%減少しています。


離婚件数は減少しているのもかかわらず、申し立てが増加していることより、令和3年はコロナ禍で先送りになった申し立てが大幅に増加したものと推測されます。


さて、離婚理由の変遷を10年単位で見てみると、男女とも「異性関係」(浮気、不倫)での申立てが大きく減少していることより、堅実な家庭観へと徐々に変容していることが見て取れます。


一方、「浪費する」、「家庭を捨てて省みない」、「性的不調和」、「家族の親族と折り合いが悪い」、「酒を飲み過ぎる」などの各項目においては、女性が大幅に減少しているのに比し、男性側では減り幅が小さくなっています。


ここでは、夫婦のあり方や社会、働き方の変化、女性の社会進出、核家族化の進展などの各要因により、特に男性の行動様式や意識が変化してきたことが推測されます。


また、男性側が受ける暴力(DV)、精神的虐待(モラハラ)は大きく増加し、女性が受けるモラハラも高止まりしているため、この問題はこれからも離婚問題の最も重要なポイントであろうと考えられます。


そして長期のスパンでは全体の申立て件数が減少する中で「生活費を渡さない」の件数が、男女とも激増していることに注目せざるを得ません。


この10年、経済的な理由での離婚はほぼ毎年減ることなく上位に位置しています。


特に令和3年はコロナの影響により、経済的な理由での離婚が大きく増加し、ストレスによると思われるモラハラも激増しており今後の動向に注意が必要です。


結局夫婦の意識や生活様式、考え方がいくら変化しても、結婚が経済的な契約であることは変わらないのだと強く感じますし、今後においても、この傾向は続いて行くものと推測されます。


モラハラや経済的理由による離婚の割合が、今後も増加していくことが想定されますので、そこに陥らないよう十分に注意することが肝要です。


一方、これらの原因が現在のパートナーにある場合は、我慢せずに当然離婚すべきという考え方も成り立ちます。


我慢して無駄な時間を浪費する時代は、既に終わっっているのだと思います。


【KADOKAWAから書籍が発売されました!『誰も教えてくれなかった「離婚しないための「結婚」の基本』】


🌸まとめ:離婚問題で迷ったり困ったりしたら弁護士にご相談ください。

この10年で離婚原因も大きく変わってきました。


変わらないのは女性側からの申立てが圧倒的に多いことと、経済的な理由及びモラハラが常に上位にいることです。


令和3年はコロナ禍の影響が離婚申し立てにも顕れています。


未婚の方は、これらの原因をできる限り避けるパートナー選びをすることをお薦めしますし、既に問題を抱えている方は一人で悩まずに、どこかの時点で一度は専門家である弁護士などに助言を求めることをご提案いたします。