別居期間は何年で離婚できるのか?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚したいと考えていた場合、「別居」はとても重量な意味を有しています。別居期間が長いほど法的に離婚が認められやすいからです。では何年くらい別居したら離婚を成立させることができるのでしょうか?離婚と別居の関係についてまとめてみました。
🌸離婚において別居は重要
離婚を考えている時には、別居という選択肢はとても重要な意味を持ちます。
まず、別居して冷静に見つめ直すことで、お互いの気持ちが落ち着き関係が修復に向かう可能性があります。
関係性が悪化している中で同居を続ければ、互いの精神的なストレスが高まったまま、身動き取れない状態となってしまいます。
離婚するか関係を修復するかの判断はとても大切です。
どちらを選択しても後々後悔することになりかねません。
その意味では、一旦距離を置いてお互い冷静になって、どちらを選ぶかじっくり考えてみる時間が必要なのです。
それでも離婚を選択する場合には、別居と離婚の関係を十分理解した上で進め方を決めることが大切です。
🌸協議離婚が難しい場合は離婚調停へ
双方の話し合いがまとまらず協議離婚が成立しない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てて離婚を求めることになります。
日本においては、離婚訴訟を考えている場合も、必ずその前に離婚調停で話し合いをしなければならない決まりとなっています(調停前置主義)。
離婚調停は、調停委員を交えて離婚の話し合いをします。
離婚調停の手続きは、一般的には調停委員が当事者を別々に個室に呼び出し、夫々個別に言い分や気持ちを聞いて進行させていきます。
基本的にお互いに顔を合わせる必要はなく、第三者を交えて離婚の話し合いを進めていくので、夫婦二人の離婚協議に比べて、冷静に条件面も含め離婚の話が進むケースが多いです。
調停の結果、夫婦の間で離婚の合意ができれば、家庭裁判所が調停調書を作成し、離婚が成立することとなります。
しかし調停は不調となることもあります。
結局は夫婦間の合意が必要なのです。
その場合には裁判によって離婚の成立を目指すしかありません。
🌸離婚調停が不調ならば裁判離婚へ
離婚調停が成立しなかったけれども離婚をしたい場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、離婚を求める手続きを取ります。
離婚訴訟が認められるためには、民法で定められた離婚原因が必要になり、原告は離婚原因があることを主張・立証しなければなりません。
法定の離婚原因は次の5つです(民法770条1項)。
裁判で離婚するときは次の5つの理由のいずれかに該当しなければ離婚はできません。
①不貞行為があったとき
※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合
②悪意を持って結婚生活を放棄したとき
※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど
③3年以上生死不明の状態にあるとき
④重い精神病にかかったとき
⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき
※DV、モラハラや別居により夫婦関係が破綻していると認められた場合など
もしこれらの①~④に該当する項目があれば離婚は成立します。
しかし該当しなければ⑤の「婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき」=「婚姻関係の破綻」で離婚するしかありません。
そして「長期間の別居」はこの「婚姻関係の破綻」に該当する可能性があるのです。
🌸別居期間は何年で離婚できるのか?
「婚姻関係の破綻」は、法律上の離婚原因のうち⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかを、裁判所が判断するときの重要な基準になります。
別居していたという事実は、「婚姻関係の破綻」の重要な要素となり得るのです。
それぞれの状況によって大きく異なりますが、一般的には3~5年程度の別居期間があると、婚姻関係が破綻しているとして、裁判所に離婚が認められやすくなる傾向にあります。
「婚姻関係の破綻」の認定の中では、相手からDVやモラハラを受けているかどうかや子どもの虐待の有無など、夫婦、家族関係の状況など複合的な要素で判断が行われます。
別居期間だけで判断されるわけではないのです。
また、別居をすることで相手に対してこちら側に決意の固さなどが伝わり、別居中に相手が折れて協議離婚が成立することも多くありますので、その意味でも別居することはとても重要です。
🌸家庭内別居や単身赴任は別居になり得る?
家庭内別居や単身赴任は、「別居」とはならない可能性が高いです。
単身赴任は仕事の都合であり別居とは認定されません。
しかし単身赴任中に離婚の協議が始まった場合などには、別居期間に含まれる可能性もあります。
家庭内別居は住所が同じで一緒に生活しているため、別居の判断がしづらい状況と言えます。
家庭内別居を別居と認定してもらうためには、家計や家事が完全に別々であったことなどを証明する必要があり、実務的には難易度が高いと考えられます。
🌸別居のメリットとデメリット
別居のメリットは前述の裁判で離婚が認められやすくなる、相手に意思の硬さが伝わることに加え、相手との距離感が生まれることで、精神的なストレスなく冷静に協議が継続できることが挙げられます。
また、弁護士を代理人とすれば、相手と一切関わることなく離婚に向けた手続きを進めることができます。
一方別居のデメリットは、経済的な問題が大きいでしょう。
同居時に比しコストが大きくかかりますので、別居するまでに具体的な生活設計をしっかり行っておく必要があります。
また、相手に何も言わずに勝手に家を出てしまうなどの行為は、法律上の離婚原因の一つである前述②の「悪意の遺棄」にあたると判断されることもあり得ます。
その場合は、家を出て行った側に婚姻関係を破綻させた責任があるとして、離婚を進める上で不利な状況になってしまうリスクがあることも頭に置いてください。
🌸同居期間と別居期間の関係性
裁判所が婚姻関係の破綻について判断する場合、「同居期間と別居期間の長さの比較」も考慮される可能性があります。
例えば結婚してからさほど年月が経っていないケースでは、別居期間が短くても離婚できる場合があります。
これは別居期間が短くても、同居期間との比較において相当長期であれば「婚姻関係の破綻」と認定されやすいからです。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士に相談を
離婚を考える時「別居」は重要な選択肢です。
しかし別居して何年で法的に離婚が認められるかは、置かれた状況で大きく変わります。
一般的には3年~5年と言われていますが、短くなる場合も長くなる場合もあるのです。
これは裁判所がそれぞれの様々な要件を総合的に判断するためです。
また別居の際の行動が後々不利に働く可能性もありますので、その場の思い付きで決めずにしっかりとゴールを見据えて慎重に検討することが大切です。
可能であれば別居する前に弁護士などの専門家に助言を求めることをお勧めいたします。
当事務所でもご相談を承っております。