法定離婚事由の3年以上の生死不明とは?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 
法定離婚事由の3年以上の生死不明とは?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。裁判で離婚が認められるには、法定離婚事由の5項目のいずれかに該当する必要があります。この中に「3年以上の生死不明」という項目がありますが、具体的にはどんなケースが該当するのでしょうか?まとめてみました。



🌸法定離婚事由とは?

日本において離婚形式は、主として「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つとなっています。


このうち「協議離婚」「調停離婚」では、夫婦の双方の合意なくして離婚することはできません。


しかし「裁判離婚」では、一定の条件を満たせば夫婦の合意がない場合でも離婚することは可能です。


まず協議離婚ですが、これは離婚全体の90%を占める最も多い離婚形式です。

条件を話し合い、夫婦双方で合意ができれば、役所に離婚届を提出するだけで離婚が成立します。


しかし、協議離婚での話し合いが不調となり離婚の合意ができなかった場合に、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員が夫婦双方の意見を聞いて離婚について話し合いを行うのが調停離婚です。


この調停により条件面も含めて合意ができれば離婚が成立します。


以上の2つはいずれにしても夫婦双方の合意が必要です。


これらが不調になった場合には、家庭裁判所に裁判を起こして、慰謝料や財産分与、親権などの条件面も含めた離婚の可否について裁判官に判決をもらい離婚する裁判離婚となりますが、裁判離婚の場合のみ一定の条件を満たせば合意は必要ありません。


その条件とは、「法定離婚事由」と呼ばれる5項目です。


1.配偶者に不貞な行為があったとき

※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合など

2.配偶者から悪意で遺棄されたとき

※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど

3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき

4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

※DV、モラハラなど様々な理由により婚姻関係が破たん状態にあること


このいずれかに該当すると裁判所が判断した場合は、双方の合意がなくとも離婚は成立します。


それでは、3の「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」は、具体的にはどんなケースを指すのでしょうか?




🌸3年以上の生死不明とは?


配偶者が行方不明である状態が続けば当然夫婦としての実体が失われますので、形式だけ婚姻関係を存続させる意義はありません。


そのため、配偶者が3年以上の間生死不明の場合には、裁判上で離婚請求ができることが法律に定められています。


3年以上とは、最後に連絡がついてから3年以上のことであり、警察に届け出を出して捜索をしても見つからない状態で、その他の様々な手段で連絡を取ろうと試みても配偶者からは連絡がなく生死が不明な状態を指します。


そしてこの3年は、通算ではなく連続している必要があります、


例えば夫婦のどちらか一方側が家を出てしまい、3年以上経過しても何の連絡もなく、生死が不明である場合には、裁判上の離婚原因として認められるのです。


相手が生死不明で居所も分からない場合には、双方の協議も家庭裁判所での離婚調停も不可能です。


そのため、裁判でしか離婚することはできません。

この場合は、警察に捜索を依頼したものの、見つけることができなかったことなどを裁判所に対して説明する必要があります。



🌸相手が生きていることがわかっている場合は?


裁判による離婚請求が認められるのは相手が生死不明である場合だけです。


もし相手が行方不明でも生存している事実が判明しているケースでは「生死不明」には該当しません。


このような場合は、離婚事由2に挙げられている「悪意の遺棄」に該当することが考えられますので、これを原因として離婚請求することが可能です。


このケースでは、相手の居所を調査した上で裁判で離婚請求する手続きを進めることとなります。


また、3年間以上生死不明で離婚が成立した後に、相手が生きていることが判明しても、離婚判決が確定している場合には離婚判決は取り消しにならないので婚姻関係は復活しません。


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🌸失踪宣告との違い

生死不明の状態が7年以上続いているときは「失踪宣告」をすることが可能です。


失踪者を死亡したものとみなし、財産関係などについての法的な安定を確保するのがこの制度の趣旨です。


失踪宣告が裁判所で認められて審判が出ると、生死不明者は死亡したものと見なされます。


この場合は通常配偶者が死亡した時と同様に相続が発生します。


遺族への遺族年金の給付や、生命保険金等にも関わって来るのが、3年以上の生死不明を理由による離婚とは大きく違っている点です。


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🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士に相談を

配偶者が長期間連絡が取れず生死不明の場合には、状況によっていくつかの離婚の方法があります。


いずれも相手がいないので、協議離婚や調停離婚の方法は取れないため基本的には裁判が前提となります。


相続に関わって来るケースもあり得ますので、まずは専門家である弁護士にご相談ください。


当事務所でもご相談を承っております。