夫源病とは?夫源病が原因で離婚できる?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 


夫源病とは?夫源病が原因で離婚できる?



兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。最近「夫源病」という言葉を耳にすることがあります。夫へのストレスが原因で体調を崩すことを指すようですが、どんな語源なのでしょうか?また夫源病が原因で離婚することは可能でしょうか?まとめてみましたのでご参考にされてください。



🌸夫源病とは?


源病(ふげんびょう)とは、夫の言動などが原因で妻が過大なストレスを感じた結果、妻の心身に不定愁訴(倦怠感、頭痛、微熱感、不眠など体調悪化に自覚症状があるが、検査をしても原因がわからない状態)が生じる状態を指します。

この夫源病という言葉は、医師の石蔵文信氏が2013年に著書「いつまでたっても更年期が終わらない…… 奥さん、それは「夫源病」ですね。」で発表した概念であり、医学的な病名ではありません。


夫源病は、夫の休日になると妻のストレスが増加し体調不良となることなどから発見され、熟年離婚が増加していることの一つの原因とされています。


また、逆に妻が原因で夫の体調が悪化するケースは、「妻源病(さいげんびょう)」と呼ばれており、どちらも増加傾向にあると言われています。



🌸夫源病の原因と症状は?


夫源病の原因は、夫が家にいることで妻が大きなストレスを感じてしまうことにあります。


ストレスを感じる原因は様々ですが、夫の性格や普段の言動、義親の介護、育児や家事に消極的なことなどが挙げられています。


モラハラ(モラルハラスメント=言葉の暴力)のようなはっきりしたケースもあれば、小さなすれ違いなどが蓄積して我慢できないほどの嫌悪感を抱いてしまっている場合もあります。


特に夫の年齢が上がって在宅時間が長くなるにつれ顕在化して行き、定年をきっかけに夫が家にいる時間が増大することで症状がさらに悪化することが多いようです。


主な症状は情緒不安、慢性疲労、不眠、頭痛、全身の痛み、動悸、眩暈などであり、更年期障害の症状に近いとも言われていますが、夫が不在の時にはこれらの症状が落ち着くことが多いのが特徴です。


夫源病を治すには、夫婦でカウンセリングを受け関係の修復を図るなどの方法が取られていますが、どうしても回復が難しい場合には離婚を選択するしかないケースもあります。



🌸夫源病を理由に離婚できるか?

離婚には、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4つの種類があります。

協議離婚とは、夫婦が話し合いに合意することで成立する離婚です。

最も簡易で、市区町村の役場に離婚届を提出し受理された時点で離婚が成立することとなります。

離婚原因も特別な手続きや費用も必要なく、離婚届が受理さえすればそのまま簡単に成立します。


夫源病を理由に離婚したいと考えた場合、相手が合意してくれるのであれば協議離婚で問題なく離婚できます。


しかし、相手の同意が得られない場合には調停離婚、裁判離婚と進むしかありませんが、最終的に裁判で離婚するためには民法で定められた離婚原因が必要になり、原告は離婚原因があることを主張・立証しなければなりません。


法定の離婚原因は次の5つです(民法770条1項)。

裁判で離婚するときは次の5つの理由のいずれかに該当しなければ離婚はできません。

①不貞行為があったとき
※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合

②悪意を持って結婚生活を放棄したとき
※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど

③3年以上生死不明の状態にあるとき

④重い精神病にかかったとき

⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき
※DV、モラハラや別居により夫婦関係が破綻していると認められた場合など


例えば「モラハラ(言葉の暴力)」「DV(家庭内暴力)」などの具体的な事例があったり、夫源病に至るまでの過程の中で夫の不貞行為(浮気)などがあった場合には、①や⑤に当てはまる場合もあります。


また夫源病がきっかけで夫婦関係が破綻していると認められる場合には、⑤に当てはまると判断されるケースもあるでしょう。

しかしただ夫源病というだけでは、裁判で離婚が認められるのは困難と言えます。

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🌸具体的な対応策は?

現状が法定離婚事由に該当しないと判断された場合には、裁判では離婚請求が認めてもらえませんので協議や調停によって離婚を成立させられるかどうかが重要です。


双方の話し合いの中で円満に解決するのが一番良いのですが、どうしても相手の同意が得られない場合には、別居をして一旦相手と距離を置いてみるのも一つの方法です。


一人で暮らしてみることで、症状が改善し前向きになれるかも知れませんし、時間が経過する中で相手が離婚に応じる可能性もあります。


また、別居期間が相当長期におよぶと、婚姻関係が破綻しているとして、裁判で離婚を認めてもらえる可能性も出てきます。


ただし相手の合意のないまま別居を強行した場合には、前述法定離婚事由②の「悪意の遺棄」にあたると判断され、その後慰謝料請求の対象となる場合もあり得ますので、状況に応じて弁護士などの専門家にご相談ください。


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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。

夫源病についてと、その具体的な対応策についてまとめてみました。


夫源病は更年期障害と症状も似ているため、該当するかどうかが分かりづらい面もあります。

また、単に夫源病だからという理由だけでは離婚が難しいため、進め方で迷ってしまうケースもあるでしょう。


もし不安がありましたら、まずは弁護士などの専門家に一度ご相談ください。