財産分与の4つの種類とは?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚時に行う財産分与は、夫婦間の共有財産を分けるだけではなく、離婚により生活が困窮する側を扶養するための財産分与、慰謝料としての財産分与、婚姻中の費用を分担するための財産分与という4つの種類があります。それぞれの内容についてまとめてみました。
🌸清算的財産分与とは?
通常「財産分与」というとイメージするのが「清算的財産分与」です。
清算的財産分与とは、離婚時に夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することを指し、預貯金や家財、車、貴金属、不動産など、あらゆる共有財産が対象となります。
結婚生活で築き上げてきたこれらの財産は、特別なケースを除き、ほぼすべてが清算的財産分与の対象なのです。
基本的に清算的財産分与は1/2ずつ分けることを原則としており、専業主婦であっても同様です。
妻本人に収入がなくとも、夫の収入は妻の貢献により得られたという考え方なのです。
一方、夫や妻が結婚前から所有していた財産は「特有財産」となり、清算的財産分与には含まれません。
🌸扶養的財産分与とは?
離婚により夫婦のどちらかの生活が苦しくなるケースでは、生活能力のある側が、相手が一定の生活水準を維持できるようになるまでサポートする必要があります。
これを「扶養的財産分与」と呼びます。
ある程度の年齢に達しておりすぐに仕事が見つけづらい専業主婦や、病気で就労できない人と離婚をするケースなどがこれに当てはまります。
一般的に男性は結婚してもそのまま仕事を続けますが、女性は子育てなどのために仕事を辞めざるを得ない場合があり、再就職には不利なケースがあります。
パートやアルバイトなど、低収入の仕事しか見つからないことも多く、生活が成り立たない場合もあるのです。
そのため、一定期間「扶養的財産分与」でサポートすることで、元のパートナーの生活設計を支援することが必要とされています。
支払い額に基準はなく、だいたい1年~3年程度の期間で「毎月〇万円」というような取決めを行います。
しかし近年は、育児休暇の取得が当たり前になりつつあり、結婚、出産後も働き続ける女性が大幅に増加していますので、扶養的財産分与が必要ないケースも増えています。
🌸慰謝料的財産分与とは?
慰謝料的財産分与は慰謝料の性質を含ませた財産分与を指し、離婚の原因が相手の不倫やDVにある場合などに行われることがあります。
芸能人が高額の慰謝料で離婚するケースがありますが、これは慰謝料的財産分与である場合が少なくありません。
例えば離婚の条件として、相手に持ち家を慰謝料的財産分与として要求するようなケースです。
🌸過去の婚姻費用の清算としての財産分与とは?
これは例えば、夫が長年にわたって生活費を払わなかったり、夫婦の別居期間に夫から生活費をもらっていなかったりといったようなケースに、その未払い分に清算を求める財産分与です。
夫婦は同居別居にかかわらず、婚姻期間中は婚姻費用を分担する義務があります。
そのため、未払いの生活費がある場合には、基本的には離婚時に清算する必要があります。
婚姻費用の金額は、通常夫婦で話し合って決めますが、決まらなければ裁判所の調停または審判で決定します。
ただし、調停や審判の場合は調停申立て時からの婚姻費用となります。
一般的には裁判所には標準的な「婚姻費用算定表」が用意されておりこれがベースとなります。
また、婚姻費用は、夫から妻に支払われるのではなく、収入の高い側から低い側に対して支払われますので、夫よりも妻の方が収入が多ければ、妻から夫へ支払われます。
しかし実務上は、「清算的財産分与」を除いた「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」「婚姻費用の清算としての財産分与」の3項目に関しては、請求はできるものの、相手が認めない、立証が難しいなどの理由により交渉が難航することが多くあります。
確実に支払いを受けられるはずの「清算的財産分与」においても、過小に財産を申告する「財産隠し」のリスクがありますので、財産分与は事前にしっかり準備、調査を行った上で臨む必要があります。
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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。
財産分与の4つの種類についてまとめてみました。
財産分与は現在の状況によって大きく変わってきますので、少しでも有利となるようしっかりと詳細に検討していく必要があります。
相手の言いなりに決めてしまい、後々後悔する事案も多く発生しているのです。
相手によってはスムーズに進まないケースもありますので、迷ったり困ったりした場合は、弁護士などの専門家へのご相談をお薦めいたします。