シングルマザーが子供を認知してもらう必要性
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。結婚する意志のない相手との間に子供ができてしまった場合に、シングルマザーを選択されるケースがあります。この場合には、極力子どもを認知してもらうべきです。認知してもらう方法、認知によって得られるメリットや権利、デメリットについてまとめてみました。
🌸認知とは?
認知とは、戸籍上の結婚をしていない男女の間にできた子どもを、自身の子どもであると法的に認めることを指します。母親と子どもは、既婚か未婚かには関係なく母子関係が認められます。
一方で父と子どもの関係は、父が母と法律上結婚しているかどうかによって変わってきます。
法律上の夫婦の間に生まれた子どもを、「嫡出子(ちゃくしゅつし)」と呼びます。
民法では、婚姻してから200日以降、婚姻解消から300日以内に生まれた子は嫡出子となりますが、これは婚姻中に妻が懐胎し生まれた子であることが明らかであると考えられるためです。
一方、法律上の結婚をしていない男女の間に生まれた子どもの場合は、実際の父親が明らかであったとしても、子どもには法律上は父親がいない状態となり戸籍の父親欄は空欄になっています。
このような場合に、特定の男性が子どもの父親であると法的に認めるのが「認知」という手続なのです。
認知をすることで、認知をした父親と子どもとの間に法律上の親子関係が生じます。
婚姻関係にない男女の子どもは、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」または「婚外子(こんがいし)」と呼ばれる立場となりますが、これは両親が既婚か未婚かというだけの違いであり、親子関係であることに変わりはありません。
したがって、父親の戸籍には認知をした子どもが記載され、子どもの戸籍の父親の欄には認知をした父の名前が記載されます。
🌸認知で得られるメリットと権利
認知されることで以下の権利が生じます。
1.養育費の請求が可能
最も大きなメリットとして考えられるのが、養育費が請求できることです。
親には子どもを扶養する義務があります。
認知することで、養育費を支払う義務が発生するのです。
養育費の額は、双方の話し合い、裁判所の調停や審判などで決定されますが、長期間の支払いとなることが多いため、総額ではかなり高額となります。
2.相続権
認知により法律上の親子関係が成立しますので、父が亡くなった場合には、子どもに相続権(遺産を受け取る権利)が発生します。
かつては嫡出子と非嫡出子で法定相続分に差がありましたが、現在は法改正により、区別することなく同じ割合で遺産を受け取る権利が認められています。
3.父親を親権者として定めることも可能
もし母親が親権者となることが困難な事情が生じた場合には、父親を親権者とすることも可能となります。
🌸認知のデメリット
認知のデメリットとしては以下が考えられます。
1.手続きが難しい場合がある
相手がすぐに認めてくれればいいのですが、結婚しない相手の子どもですので、認めたくないと考える人が多いのが実情です。
このため、相手と何度も交渉したり、認知の訴えを裁判所に起こしたりしなければならないケースもあり、時間的にも金銭的にも負担がかかることが多くあります。
2.相手との関係性が続いて行く
当然ですが、認知した場合は父親となりますので、その後の関係性は永く続くこととなります。
養育費や相続権は欲しいが、日常的には関わりたくないというような自分本位の考えは通用しません。
相手との関係があまり円満ではないようなケースでも、付き合って行かざるを得ないのです。
3.将来において父親の介護を求められる可能性がある
認知をして親子関係が成立すれば、権利だけではなく義務も生じます。
親子間の扶養義務はお互いに負うものなのです。
将来においては、子どもが親の面倒を見ることも、その義務に含まれています。
🌸認知の種類と認知を求める方法
認知には、任意認知と強制認知の2種類があります。
1.任意認知
任意認知は、父親が自分の意思で子どもの父親であることを認めることを指し、具体的には父親自身が市町村役場に「認知届」を提出します。
この手続きは妊娠中でも可能ですが、その場合は母親の承諾が必要です。
また、子どもが成人している場合は、その子本人の承諾が必要となります。
さらに、子どもの直系卑属(父親から見れば孫やひ孫など)がいる場合には、子どもがすでに亡くなっている場合も認知が可能であり、孫などに相続権が移り財産を残すことができます。
2.強制認知
強制認知は、父親に任意認知をしてもらえない場合に、裁判所を通じて強制的に認知させる制度を指します。
強制認知の手続きは、まず家庭裁判所に認知を求める調停を申し出て、合意に至れば審判という形で終了しますが、父親がどうしても認知を拒み、合意が得られない場合は裁判に進みます。
この場合、最近ではDNA鑑定がしばしば用いら、父子関係があるという鑑定結果が出れば、判決で父子関係が認められる可能性が高くなります。
また、父親が亡くなった後でも、「遺言による認知」、「死後の強制認知」の二つの方法で認知が可能です。
「遺言による認知」は、父親自身が認知の意思を有していたにもかかわらず、生きている間には妻や家族の手前できなかったようなケースで使われます。
また、「死後の強制認知」は、父親の死亡から3年に限り、子どもの側から認知を求めて裁判を起こすことで相続できる可能性があります。
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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。
シングルマザーが子供を認知してもらう必要性についてまとめてみました。
認知されるかどうかで、養育費などの金銭的な問題が大きく変わってきますので、実情に合わせて極力あきらめずに交渉すべきでしょう。
しかし相手によってはスムーズに進まないケースも多くありますので、迷ったり困ったりした場合は、弁護士などの専門家へのご相談をお薦めいたします。