養育費を払えない場合の対処法|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ


養育費を払えない場合の対処法


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。様々なトラブルや環境の変化などで、一度取り決めた養育費が払えなくなることがあります。しかし養育費を払わず放置していると給与の差し押さを受けたり、罪に問われる可能性もあり注意が必要です。そんな場合には一体どのように対処すべきなのでしょうか?



🌸養育費の支払いは義務です 


離婚して未成年の子どもがいる場合、子どもを監護する親(監護親)は、子どもを監護していない親(非監護親)に対し、子どもの養育のための費用を請求することができます。

これを「養育費」と呼びます。


養育費の支払義務は「生活保持義務」と言われています。

これは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を、扶養を受ける者にも保持させる義務のことを指します。


つまり養育費は、非監護親が暮らしている水準と同程度の水準を保てるように支払っていくべきであるという考え方です。


養育費は子どもが親に対して、親の扶養義務に基づいて請求するものであり、あくまで子どもの権利です。


実際には両親が離婚するにあたり、子どもの面倒をみることになった親が、その子どもに代わって他方の親に請求するという形を取るのです。


ですから「自分の生活が苦しいから」「借金があるから」というような言い訳は通用せず、自分生活レベルを落としてでも子どもに生活保障をしなければならないのです。


🌸養育費を支払わないとどうなる?

まず発生する可能性があるのが「給与や預貯金の差し押さえ」です。

もし、離婚した際に公正証書で養育費の支払いを取り決めていた場合には、相手はそれ使ってすぐに給与や預貯金の差し押さえ(強制執行)の申し立てをすることが可能です。


離婚調停や離婚訴訟で養育費が決まっている場合も同じであり、給料、預貯金、保険、株式、不動産、車などの財産が差し押さえ対象となります。


一方、養育費の約束事を公正証書にしていない場合であっても、相手が養育費請求調停や審判をしてくれば、いずれ養育費の支払い義務が確定します。


そうなれば調停調書や審判書を使って、同様に差し押さえをされてしまいます。


そして2020年4月の法改正では、債権者は金融機関や年金事務所などに預金口座や勤務先についての情報照会ができるようになりました。


以前よりも容易に、この情報照会制度を通して、勤務先を確認し、給与差し押さえの手続きができるようになっているのです。


また、この2020年4月の法改正では、裁判所の「財産開示手続き」に協力しなかった債務者に適用される刑事罰が新設されました。


財産開示手続きは、債権者が債務者の財産内容を調査するために裁判所に申し立てを行うことで、裁判所から債務者へ財産開示を促したり命じたりする手続きを指します。


財産開示命令を無視したり、虚偽の報告をした場合には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑」が下される可能性があります。


つまり、養育費を払わないまま、その後裁判所からの呼び出しや命令にも応じなければ、「前科」がつくリスクを抱えることとなります。


🌸取り決めた養育費を減額できるか?


しかし現実には、止むを得ない事情で養育費を払えない場合もあります。

どんな場合になら養育費を減額できるのでしょうか?


以下の事情であれば、養育費の減額が認められる可能性があります。


1.止むを得ない事情での収入減

養育費の支払い義務者が、病気やけが、リストラなどで収入が減少した場合には、養育費の減額を求めることが可能です。

例えば、生活保護を受給するようになったケースでは、基本的に養育費支払い義務はありません。


2.養育費の支払い義務者が再婚した

養育費の支払い義務者に新しい家族の扶養義務が生じた場合、以前の子どもに支払う養育費を減額せざるを得ないと認められる可能性があります。


3.子どもが養子縁組した

相手が再婚した場合などで、以前の子どもが養子縁組した場合には、一次的には養親が子どもを養育すべき義務を負いますので、実の親は養育費を払わなくて済む可能性が高くなります。


しかし相手が再婚しただけであれば、養育費支払い義務は消えず、養子縁組した場合だけに限られます


4.相手の収入が増加した

養育費の金額は、支払う側と受け取る側の収入のバランスによって決定されます。

ですから、受け取る側の収入が増加した場合には、養育費を減額できる可能性が生じます。


以上のような理由であれば、養育費の減額が認められる可能性がありますが、例えば「子供と面会させてくれないから払いたくない」など、別のトラブルが原因で支払いたくないと思ったとしても、養育費は払い続けなくてはなりません。


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🌸養育費の減額を求める手続きは?

止むを得ない事情で養育費を減額したい場合の手続きは、以下の流れとなります。

 

1.話し合い

まずは、事情を相手に説明して合意を求めます。

相手が理解を示し合意に至れば、新たな条件で「養育費に関する合意書」を作成します。


2.養育費減額請求調停の申し立て

相手が話し合いに応じてくれない場合や金額が決まらない場合は、家庭裁判所に「養育費減額請求調停」を申し立てます。

調停では、調停委員が間に入って相場の金額も提示して調整してくれます。


もし調停が不成立になった場合では、審判によって裁判所が新しい養育費の金額を決定します。


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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。

様々な事情より養育費が払えなくなることは、実際に多く起きている問題です。


しかし仕方がないと放置を続けていると、最悪の場合刑事罰の対象となってしまうケースもあります。


事情によっては養育費の減額が認められる場合もありますので、まずは弁護士などの専門家に相談してみてください。