離婚約とは?メリットデメリットは?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。最近「離婚約」という言葉を目にすることがあります。一体どういう意味なのでしょうか?その語源は?メリットデメリットは?まとめてみましたので、ご参考にされてください。
🌸離婚約とは?
この言葉はお笑いトリオ「インスタントジョンソン」の「じゃい」さんの造語です。
奥様から突然「4年後に離婚します」と告げられたことを、ブログに「離婚約」というタイトルで掲載したことが話題となり広がりました。
その後2017年には双葉社から「離婚約」として書籍も発売されています。
具体的な言葉の意味としては、「子どもが成人したら別れる」「夫が定年退職をしたら離婚する」「4年後に離婚する」などの約束=合意を元に、婚姻生活を続けていくことを表しています。
言葉としては新しいのですが、実際は過去からこのようなケースは多く存在していました。
将来に希望が持てない関係になった夫婦が、子育て、夫の定年など、節目までは我慢して婚姻生活を維持し、その後は合意の上で離婚することはよくあります。
では、そのような状況の中で、「離婚約」を交わすことには、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
🌸離婚約のメリット
では離婚約にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
一つは精神的な準備ができることが挙げられます。
離婚して一人になれば、現在の生活の様々なストレスから解放されて自由になる反面、寂しさや将来に対する不安も湧いてきます。
また、子どもとの関係性や周囲との人間関係など、整理しなければならないことも多くあります。
離婚する時期が決まっていれば、それらを時間をかけて整理して、自分の中で消化していくことで、スムーズに離婚後の自分を作り上げていくことが可能となります。
二つ目は経済的な準備ができることです。
突然離婚した場合には、財産分与、慰謝料、養育費などをすぐに取り決めなければならず、新居や仕事の手配など、バタバタと急いで新しい生活に移行しなくてはなりません。
ケースによっては、十分な経済的な準備ができず苦労することも多くあるのです。
離婚する時期まで一定の期間があれば、慌てずにじっくりと離婚後の生活設計を考え、準備することが可能となります。
三つ目は夫婦関係の改善につながる場合があることです。
離婚約によりパートナーとの新しい関係性が芽生えることがあるのです。
感情的になり「もう絶対無理!」と思っていたのに、離婚を前提に生活していくことで、相手の態度が変わったり、良い点を再発見したり、家族の重要性を再認識したりして、元の良好な関係に戻れるケースも多くあります。
離婚の約束をしているからこそ言える本音もあるでしょう。
その意味で離婚約は、お互いの本当の気持ちを確かめ合える大切な期間をくれるのかも知れません。
実際にじゃいさんは、離婚約の期間に夫婦お互いが家族の大切さを再確認し、離婚を回避することができたそうです。
🌸離婚約のデメリット
離婚約には大きなデメリットも存在します。
その一つは「財産隠し」です。
離婚約を提案することは、相手に自身の強い離婚の意思を表明することになります。
相手が不本意だと感じた場合には、離婚までの期間に「財産隠し」などのを対策を実行されてしまうかも知れません。
一般的には離婚を切り出す前には、財産分与を前提として現在の資産を極力下調べし、正当な金額を把握することが必要です。
しかし離婚までの期間が長ければ長いほど、財産隠しなど、相手が自分に有利となるような工作をする時間を与えてしまうことにもなりかねないのです。
二つ目は、夫婦関係が更に悪化するリスクがあることです。
相手の性格によっては、離婚約を提案しただけで猛反発して、かえって夫婦関係が悪化してしまうようなケースもあります。
その意味では、相手の性格をしっかり見極めた上で慎重に対応する必要があるのです。
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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。
今回は離婚約についてと、そのメリット、デメリットをまとめてみました。
将来に向けて期限を決めて離婚の約束をすることは、関係を改善するきっかけになることもありますし、逆に破綻を決定的にしてしまうリスクもあります。
離婚約をしたい方も、突然切り出されて困っている方も、離婚の悩みは弁護士などの専門家に相談してみてください。