成年年齢の引き下げで養育費は18歳まで?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 


成年年齢の引き下げで養育費は18歳までしかもらえなくなるのか?



兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。2022年4月1日の民法改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより養育費を成人までと取り決めていた方は、18歳までしかもらえなくなるのでしょうか?まとめてみました。



🌸養育費とは?

離婚して未成年の子どもがいる場合、子どもを監護する親(監護親)は、子どもを監護していない親(非監護親)に対し、子どもの養育のための費用を請求することができます。


これを「養育費」と呼びます。


養育費の支払義務は「生活保持義務」と言われています。

これは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を、扶養を受ける者にも保持させる義務のことを指します。


つまり養育費は、非監護親が暮らしている水準と同程度の水準を保てるように支払っていくべきであるという考え方です。


一般的に、離婚時には養育費の額を取り決めます。

しかし何らかの事情で早急に離婚手続きが必要と判断された場合などでは、養育費を取り決めていないケースもあります。

そんな場合でも相手に対して養育費を請求できる権利はあります。


養育費は子どもが親に対して、親の扶養義務に基づいて請求するものであり、あくまでも「子どもの権利」です。


実際には両親が離婚するにあたり、子どもの面倒をみることになった親が、その子どもに代わって他方の親に請求するという形を取るのです。



🌸養育費はいつからもらえる?


それでは養育費はいつからいつまでもらえるのでしょうか?

最初にもらえるタイミングは、基本的には「養育費を請求した時」からとなります。

通常は離婚する際に養育費の取り決めを行いますので、その場合は離婚時から支払いがスタートします。


一方、離婚時に養育費の取り決めを行わずに、離婚後に請求する場合には、請求した時点からとなり、遡って請求しても認められないケースが多くなっています。



🌸養育費はいつまでもらえる?


養育費は、未成熟の子どもの養育に必要な費用と考えられています。


未成熟とは、精神的、身体的、経済的に未熟で、未だ自立できていない状態にあると解されます。

ですから、未成熟と未成年はイコールではないのです。


未成年であっても働いて独立していれば、未成熟ではないものと考えられます。

実務上は、20歳未満を未成熟、20歳以上を成熟と評価し、養育費の終期を決めていない場合には終期を20歳までとしているケースも多くあります。


しかし、双方の話し合いで、大学卒業の22歳までとしたり、子どもが自立しているため18歳としたりすることも可能です。


養育費の支払いは子どもが成人となるまでに限ってはいないのです。


ですから、今回の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられましたが、養育費が一律で18歳までしか支払われなくなるということではありません


その証左に、参議院法務委員会でも「成年年齢と養育費負担終期は連動せず、未成熟である限り養育費分担義務があることを確認する」とされています。


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🌸「成人するまで支払う」と取り決めてある場合は?


それでは、「子どもが成人するまで養育費を支払う」と離婚時に取り決めている場合はどうなるのでしょうか。


文字通り解釈すれば、成人が18歳となりましたので、そこまでしか支払い義務がないように読めます。


しかし法務省の見解は「養育費の取り決めを行った時点では成年年齢が20歳であった場合には、成年年齢が18歳に引き下げられたとしても、20歳までは養育費の支払義務を負う」となっています。

参照:民法(成年年齢関係)改正 Q&A|法務省

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html


ですから基本的には、養育費の取り決めをした時点での成年年齢(満20歳)まで養育費を請求することは可能であると考えられます。


しかし厳密に申し上げると、養育費の支払義務を判断するのは裁判所ですので、最終的には裁判所の判断を待つ必要があります。


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🌸まとめ:養育費の問題で困った時は弁護士にご相談ください。

成年年齢の引き下げでは、養育費の支払い条件が「成人まで」となっていたような場合に、無用のトラブルが起きることも懸念されます。


その場合も、基本的には20歳まで請求できるものと解釈されていますが、相手とのやりとりでお困りになったようなケースは弁護士にご相談ください。