事実婚の解消で財産分与や慰謝料は請求はできるか?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ


事実婚の解消で財産分与や慰謝料は請求はできるか?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。最近、事実婚、別居婚など、新しい夫婦やパートナーのカタチが見直されています。例えば事実婚の場合、夫婦としての婚姻届けの提出は行いませんが、パートナー解消の際には、慰謝料や財産分与などは請求可能なのでしょうか?まとめてみました。



🌸事実婚とは

事実婚は「内縁」とも表現されますが、婚姻届は提出していないものの事実上婚姻と評価できる状態にあることを指します。


事実婚であるかどうかは、「当事者の双方が婚姻関係を成立させる意思を有して共同生活を行っている」「社会的に夫婦と認められる生活実態がある」などの要件が考慮され判断されます。

ですから、単に同棲しているだけでが事実婚とは言えません。


事実婚の場合、同一の戸籍とならない、税制上の配偶者控除などが適用されない、相続が認められない、子どもが生まれると父親は認知をしないと法律上に父親にはなれない、などのデメリットがありますが、一方、姓が変わらない、対等な関係を維持しやすい、相手方の親族との付き合いが薄くてすむ、などのメリットも存在します。


特に、どうしても姓を変えたくない場合や、縛られずにゆるやかな関係を望むカップルなどにより、事実婚がチョイスされ増えつつあるようです。



🌸事実婚の解消で慰謝料請求はできるか?



もし事実婚の解消する場合、慰謝料請求はできるのでしょうか?


法律上の夫婦が離婚する場合には、婚姻関係の破綻原因を作った夫婦の片方に対し慰謝料を請求することが可能ですが、事実婚の場合も同様であると考えられます。


例えば、相手に不貞行為があったり、DV、モラハラなどの行為が解消の原因であれば、慰謝料は請求できるでしょう。


また、正当な理由なく事実婚を破棄した場合にも慰謝料が請求可能なケースがあります。


法律上の夫婦が裁判で離婚する場合には、民法770条1項の「法定離婚事由」に該当しなければ離婚は認められません。

法定離婚事由は以下の5項目です。


1.配偶者に不貞な行為があったとき

2.配偶者から悪意で遺棄されたとき

3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき

4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき


事実婚においても考え方は同様ですので、これらの事由に該当せずに事実婚を解消した場合は、正当な理由なく一方的に事実婚を破棄したとして慰謝料請求の対象となる可能性があるのです。



🌸事実婚の解消で財産分与は請求できるか?

法律婚の離婚と同様に事実婚解消の際も、財産分与を請求する権利が認められています。


財産分与は、離婚する際に夫婦が共同で築き上げた財産を分ける手続きを指します。(民法第768条第1項)


通常の場合、所有する財産はどちらか一方の名義となっています。

しかし、婚姻期間中に取得した財産は、片方の名義となっていても、配偶者の協力があって築かれたものでと考えられています。


ですので、離婚する際には、婚姻期間中に夫婦の片方が取得した財産も、原則としては共有財産と評価され分与の対象となります。


そして財産分与では、共有財産を双方2分の1ずつ分けるのが原則です。


夫婦の共同名義の財産は当然のこと、いずれか片方の名義の財産も、それが婚姻期間中に取得されたものであれば、夫婦の共有財産と推定されます。(民法第762条第2項)


婚姻期間中に取得した不動産、株式、車、貴金属、家具などは、通常すべて夫婦の共有財産として財産分与の対象となるのです。


一方、夫婦の片方が婚姻前から所有していた財産や、明らかに夫婦の協力とは無関係に婚姻中に自己の名義で取得した財産は、特有財産となり財産分与の対象から除外されます。


この考え方は事実婚の場合も変わりません。

尚、事実婚の解消から2年を経過した場合には、財産分与請求権は時効によって消滅しますので注意が必要です。



🌸事実婚の解消で子供の養育費はもらえるか?


事実婚の夫婦の間に子どもがいる場合、母親は子どもの法律上の親となりますが、父親はそのままでは法律上の親とはなりません。


父親が認知をする必要があるのです。

認知をしなければ子どもと父親との間に法律上の親子関係が生じませんので、扶養する義務は生じず養育費の支払い義務も生じません。


ですので、養育費を請求するためには、子どもの「認知」が必須となります。


また、事実婚ではパートナー間の相続関係は発生しませんが、認知をすることで事実婚が解消された後も子供は父親の財産を相続できることとなります。


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🌸もし事実婚の解消でトラブルになった場合は?

事実婚の解消に関してパートナー間の話し合いがまとまらずトラブルになった場合は、以下の方法で対処が可能です。


1.内縁関係解消調停の申立て


法律婚での離婚調停同様、事実婚の場合も家庭裁判所に内縁関係解消調停を申し立てることが可能です。


調停では調停委員を交えて、財産分与や慰謝料などの財産に関する問題も含めて当事者同士が話し合い解決を図ります。


2.訴訟を提起する


内縁関係解消調停によっても解決に至らなかった場合には、訴訟を提起して裁判官が言い渡す判決で解決を図ることが可能です。


3.弁護士に相談する


弁護士は代理人として、財産分与や慰謝料についても、法的な根拠をもとに適正な金額を算出して冷静に話し合いを進めますので、相手が納得しやすくスムーズな解決につながるケースが多くあります。


また、調停や訴訟になった場合も、不利な条件を一方的に押し付けられることがなく安心です。


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🌸まとめ:困ったり迷ったりしたら弁護士にご相談ください。

事実婚を解消する場合も、離婚と同様に様々な問題が発生します。


特に財産分与や慰謝料、養育費などは、双方の利害や考え方の相違などで、深刻なトラブルとなることも少なくありません。


そのような場合には弁護士などの専門家に意見を求め、解決への確かなビジョンを持って対応すれば安心です。

当事務所でもご相談を承っております。