会社経営の夫と離婚する際に考えるべきこと|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 

会社経営の夫と離婚する際に考えるべきこと



兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。夫が会社経営者であり、離婚を検討する際には、夫がサラリーマンなどの場合と異なる注意点があります。どんなところがポイントなのでしょうか?まとめてみました。



🌸財産分与での留意点


1.財産の2分の1をもらえるとは限らない


「財産分与」は婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を分け合うことであり、妻が専業主婦であっても原則的には夫婦の共有財産を2分の1ずつ分け合います。


しかし夫が会社経営者で多額の収入がある場合には、必ずしも2分の1になるとは限りません。

それは、一般的な労働とは異なり、個人的な能力や努力によって多くの収入を得ていると考えられるからです。


夫が会社経営により得ている収入や資産が、妻の貢献に見合う収入を超えると考えられる場合には、妻の財産分与における取り分は2分の1よりも少なくなります。


割合はケースバイケースであり夫婦で個別に違いますので、双方で協議することとなりますが、裁判例では妻の財産分与の割合が10%を下回る判決も出ています。


2.会社名義の財産は分与の対象ではないが、ケースによっては可能性あり


会社名義の財産は、個人である夫の財産とは別であり、夫婦共有財産には含まれません。


しかし、夫の経営する会社の規模が小さく、実質的に個人経営と同じと判断される場合には例外となるケースもあります。

こういった業態では、会社名義の財産であっても、個人が私用で使っていることも多くあるため、その場合には財産分与の対象となる可能性があります。


例えば自動車などがよく問題となりますが、その他にも事業の内容によっては様々なものが対象となることもあるでしょう。


人によっては、ほとんどの資産を会社名義としているようなケースも存在し、会社名義の預貯金についても、全く可能性がないわけではありませんので、疑義がある場合は弁護士などの専門家にご相談されることをお薦めします。



🌸分与額を増やすポイント

財産分与が一般的なサラリーマン家庭と違い2分の1よりも下がる可能性があるからといって、不利なのかと言えばそうではありません。


会社経営者の夫であれば、不動産や高級車、有価証券、ゴルフ会員権、貴金属など高額な保有資産があることも多いので、これらをもれなくリストアップし、財産分与に含めるよう要求することで、割合は低くても額的には多くなることも考えられます。


ポイントは、ともかくあきらめずに、それが会社名義の資産であろうとも、粘り強く交渉することです。


また、もう一つ気をつけておくべきは自社株の問題です。


通常夫が株式会社を経営していれば、自身が自社株を保有しているケースが大半です。

この自社株に大きな価値がある場合が多く、これは財産分与の対象に含まれるのです。


しかし夫の自社株を分割して保有を求めるのは、会社経営に影響を与えることにもなるため、離婚時に財産分与を求める場合には、この価値と引き換えに他の財産を多く分割してもらうことを要求するのが得策です。


また、ケースによっては退職金も分与の対象となる場合があります。


実際に退任するのが数十年など相当先になることも考えられるため、財産分与が認められない場合もありますが、会社が「長期平準定期保険」や「小規模企業共済」などに加入している場合には、「解約返戻金見込額」が財産分与の対象となり得るケースもありますので、請求の対象に含めておくのが賢明です。


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🌸その他の留意点

例えば夫の会社で妻も働いていた場合、離婚によって解雇されるのではないかと不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。


しかし離婚は解雇の事由とはなり得ませんので、もし仕事を続けたいならば、辞めさせられることはありません。

解雇を迫られたら、それは違法行為となりますので、弁護士等にご相談ください。


また、会社を共同経営をしていたようなケースでは、離婚時に事業の一部を分割して、自身が経営者として再出発されることもご検討ください。


また慰謝料は、夫婦のどちらかが離婚原因を作った場合に、被害を受けた側の精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金であるため、相手が会社経営者で高額な所得があったとしても、これに該当しなければ請求はできません。


しかし、もしこれに該当する行為があった場合には、夫側が金銭的に余裕があり解決を急ぐ場合に、相場より多くの慰謝料を取得できるケースも多くあります。


そのためにも、極力裁判ではなく、可能な限り双方の協議や調停で決着を付けることを目指すのが得策です。


裁判になってしまった場合、裏付けの証拠を提出しなければならず簡単ではありませんし、どうしても対立的になるため、相手は極力金額を減らそうとしがちだからです。


そして協議で離婚となった場合には、必ず離婚協議書を作成しましょう。


しかしどんなに良い条件で協議が成立したとしても、その取り決めを守ってもらわなければ意味はありません。

特にお子様がいらっしゃる場合の養育費などは、長期に亘って支払い続けてもらわなくてはなりません。


そのため、確実に約束を守ってもらうために、「強制執行認諾文言付きの公正証書」で離婚協議書を作成することをお薦めします。


こちらを作成すれば、養育費などの支払いが滞った場合でも、裁判所から差し押さえの手続きをすることが可能だからです。


※調停で離婚した場合には「調停調書」が同じ効力を発揮します。


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🌸まとめ:困ったり迷ったりしたら弁護士にご相談ください。

会社経営者の夫と離婚する場合に考えるべきポイントをまとめてみました。

特に財産分与における会社名義の資産、自社株の扱いなど固有の争点がありますので、自分一人で判断するのは難しい問題もあります。

まずは現状を弁護士などの専門家に相談することから始めてはいかがでしょうか?