経済的DVとは?対処法と離婚する方法|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ


経済的DVとは?対処法と離婚する方法


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。経済的DVという言葉をよく聞くようになりました。例えば夫が収入を管理していて、無職又は収入の少ない妻に生活費を十分に渡さないような事例で使われています。このような場合に、どうに対処すべきかまとめてみました。



🌸経済的DVとは何か?


「DV(ドメスティック・バイオレンス=domestic violence)」は、配偶者やパートナー(または元配偶者や元パートナー)による暴力という意味で使われている言葉です。


DVには暴力を奮う、ものを投げつけるなどの「身体的DV」や、罵倒したり人格を否定したりするなどする「精神的DV」があります。


また、最近では「経済的DV」という言葉もよく使われるようになってきました。

これは、経済的な自由を奪ったり、わざと生活費を渡さなかったりして、配偶者やパートナーを経済的・精神的に追い詰める行為を指します。


DVに関係する法律としては、「DV防止法」(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)があります。


この法律では、身体的な暴力だけを対象としているのではなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動=精神的な暴力も保護の対象としています。


この法律の目的は、裁判所が加害者に接近禁止命令や退去命令を出して被害者の保護を図ることです。

したがって、「身体的DV」「精神的DV」はこの法律の対象ですが、「経済的DV」は対象外となります。


しかし通常のケースでは、「経済的DV」だけを受けていることは稀であり、「身体的DV」「精神的DV」と合わせて「経済的DV」を受けていることが多いと思われます。



🌸具体的な経済的DVの事例は?

経済的DVのは明確な定義はありませんが、具体的には以下のケースが経済的DVと認められやすい事例です。


1.生活費を渡さない

収入があるにもかかわらず、必要な生活費を全く又はほとんど渡されないのは経済的DVとなる可能性があります。

このような状況では、自分の貯金を取り崩したり、実家の援助を得たり、借金をしたりして生活するしかないからです。

しかし、夫婦それぞれに収入があり、配偶者からの生活費の支出がなくても生活に支障が出ない場合には、経済的DVとは認められないことが多いと思われます。


2.自由に使えるお金を渡さない

夫婦間のお金の管理は、夫婦が話し合って決めるべきことなので、どちらがしても全く問題ありません。

しかし何の理由もなく、お金の管理をする側が、夫婦の片方が収入がないにもかかわらず、自由に使えるお金を全くまたはほとんど渡さないことは経済的DVにあたる可能性があります。


3.相手が働くことを許さない

相手に必要な生活費も渡さないにもかかわらず、専業主婦(主夫)であることを強要したり、相手が働くことを許さない場合は、経済的DVにあたる可能性があります。


4.片方だけの生活費だけでは足りないのに働かない

生活費が足りないことを認識しているにもかかわらず、働かずに相手に一方的に経済的負担を押し付けている場合には、経済的DVにあたる可能性があります。


5.浪費のために借金を繰り返す

ギャンブルや自分の趣味、遊興費のために借金を繰り返し、生活費の負担に応じないような場合には、経済的DVにあたる可能性があります。


6.相手に一方的に倹約を強要する

自分の収入が十分にありながら、収入や預貯金について配偶者に知らせずに、相手に一方的に倹約を強要するなどの行為は、経済的DVにあたる可能性があります。



🌸経済的DVを受けている時はどうしたらいいのか?


経済的DVを受けている場合には、以下の方法での対処が必要です。

1.まずは親族や友人への相談

自分一人で悩むのが一番いけないことです。

まずは思い切って、親、兄弟や友人など、一番信頼できる人に相談して話を聞いてもらうことが大切です。

自分では見つからなかった解決方法が見えてくる場合もありますし、相手との間に入って話をしてくれる場合もあります。


2.弁護士に相談

経済的DVなどが原因で離婚を考えている場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

お住いの地域の弁護士が、初回無料相談を受けつけているケースが多いので、ネットなどで調べて電話やメールで問い合わせてみてください。

DVやモラハラの加害者は、離婚協議が難航するケースが多い傾向にありますので、まずは専門家の意見を聞いてみることがスタートと考えましょう。


3.公的な相談窓口に相談

公的な相談窓口で相談したいけれども、窓口がわからない場合には、男女共同参画局のDV相談ナビに電話してみましょう。

【男女共同参画局のDV相談ナビ】

「配偶者からの暴力に悩んでいることを、どこに相談すればよいかわからないという方のために、全国共通の電話番号(#8008)から相談機関を案内するDV相談ナビサービスを実施しています。」https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html

こちらから最寄りの窓口に自動転送されます。



🌸経済的DVを理由に離婚はできるのか?

夫婦双方が離婚に合意すれば、離婚が成立しこれを協議離婚と言います。

しかし合意に至らなかった場合には、離婚調停を申し立て、それが不調に終わった場合は裁判に進みます。


例えば、裁判で離婚することを想定した場合には、次の5つの理由のいずれかに該当しなければ離婚はできません。


①不貞行為があったとき

※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合


②悪意を持って結婚生活を放棄したとき

※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど


③3年以上生死不明の状態にあるとき


④重い精神病にかかったとき


⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき

※DV、モラハラなどにより夫婦関係が破綻していると認められた場合など


以上に事由に合致するならば、法的な手続きを進めて行けば離婚することが可能となります。


経済的DVは「②の悪意の遺棄」に可能性があります。

また、経済的DVなどにより、裁判所が夫婦関係が修復不可能なほどにまで破綻していると判断すれば「⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき」に該当することも考えられます。

一般的には、経済的DVだけでなく、身体的、精神的なDV、モラハラなども行われているケースが多いため、それらと合わせて「法定の離婚原因にあたる」と主張して、証拠を提出し、最終的に離婚が認められることを目指します。


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🌸経済的DVの証拠を準備しておきましょう


調停や裁判に進むことを検討している場合は、念のために証拠を準備しておきましょう。


経済的DVの証拠となる例は、主として以下のようなものです。


経済的DVに関連する音声データ(生活費の支払いを拒否された発言などや罵倒・暴言)

経済的DVを受けた期間の家計簿

生活費が振り込まれていあいことがわかる預貯金通帳

経済的DVの被害の内容を記載した日記

配偶者が浪費したクレジットカードの利用明細

配偶者の借金に関連する明細書


【KADOKAWAから書籍が発売されました!『誰も教えてくれなかった「離婚しないための「結婚」の基本』】



🌸まとめ:経済的DVで悩んだら、まずは専門家に相談を

経済的DVの被害を受け続けると、精神的に追い詰められ正常な判断ができなくなる場合があります。


また、身体的DV、精神的DVなども同時に受けているようなケースでは、相手に恐怖を感じて話し合いができずに、解決策が見いだせない場合もあるでしょう。


そのような場合には、一人で悩むことなく、まずに、一度公的な窓口や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。