生命保険などの保険は財産分与の対象か?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 


生命保険などの保険は財産分与の対象か?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚時の財産分与では、夫婦で婚姻中に協力して築き上げた財産は、財産分与の対象となります。通常は2分の1ずつ分けるのですが、生命保険などの保険はどのように考えればいいのでしょうか?まとめてみました。



🌸保険は財産分与の対象か?

財産分与とは、離婚時に夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を、公平に分配することを指します。


預貯金や家財、車、貴金属、不動産など、あらゆる共有財産が対象となりますが、保険はどのように考えればいいのでしょうか?


保険には損害保険、生命保険、各種共済などがあります。

すべて共通する考え方は「解約返戻金」があるものは財産分与の対象となり得る、ということです。


火災保険や自動車保険など主として1年契約のものもあれば、生命保険のように長期の契約のものもあります。

1年契約の掛け捨ての保険はあまり問題にはなりませんが、生命保険分野では、終身保険、養老保険など高額な解約返戻金が発生する保険もあります。


基本的には、どれも「解約返戻金」をベースに財産分与に含まれることを念頭に置くようにしてください。



🌸保険の解約が難しいケースも多い

しかし実際問題としては、保険の解約が難しいケースも多いです。


例えば自動車保険は解約すれば翌年の無事故割引に影響しますし、生命保険では加入時より年齢が進めば保険料が割高になったり、健康状態によっては再加入できないケースもあります。

また、加入時よりも運用利回りが大きく下落しており、解約して再加入することで大きく損をするケースも多くあるのです。


解約返戻金相当額が財産分与の対象になるとしても、財産分与時に保険を解約して再加入するよりも、そのまま契約を継続したほうが良いケースが多くありますので、慎重に判断する必要があります。



🌸契約者を変更する場合

契約の内容によっては双方の話し合いで、保険の契約者を一方から他方へ変更するケースもあります。


この場合には、保険会社に対し、保険の名義変更の手続きを行います。


例えば、契約者が夫、被保険者が妻、受取人が夫というの生命保険に加入しているケースでは、契約者と受取人を妻に名義変更し、その後の保険料は妻が支払うこととすることができます。

若いうちから加入していた保険の場合、この手続きをすることでそのままの条件で継続することができ、解約して再加入するよりも有利になることが多くあります。


また、ケースによっては保険の契約者の変更は行わず、保険金の受取人のみを変更する場合もあります。

離婚後の生命保険金の受取人を元配偶者から子どもや自分の親に変更しておくケースです。

この手続きは元も受取人の同意は必要ありません。


また、いかなる場合も保険期間中に被保険者を変更することはできませんので注意が必要です。



🌸代償金の支払等



保険契約を継続する場合には、契約者となっている配偶者は、他方配偶者に対して、基本的に財産分与基準時の解約返戻金相当額の2分の1を代償金として支払うか、同じ価値の他の分与対象の財産を取得させます。


また、婚姻前から生命保険を契約していて、婚姻後も継続していたケースでは、婚姻時の解約返戻金の金額と、財産分与基準時の解約返戻金の金額との差額の2分の1が財産分与の対象と考えられます。


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🌸生命保険契約を解約する場合

生命保険契約を解約する場合は、契約者本人が保険会社に対して解約の申込みを行います。

手続きが完了すると、解約返戻金が支払われますので、基本的には解約返戻金の2分の1ずつを夫婦で分けることとなります。

保険契約の解約手続きには、一般的には解約申請書、保険証書、契約者の本人確認書類などが必要となります。


念のために、事前に保険会社に対して必要書類を確認しておけば安心です。


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🌸まとめ:困ったり迷ったりしたら弁護士にご相談ください。

「保険」の財産分与における考え方とポイントをまとめてみました。


掛け捨ての保険は解約返戻金は少額なものが多く大きな問題とはなりませんが、積立型の保険では、解約返戻金が数百万となるようなケースもあるため、特に生命保険分野の終身保険、養老保険には注意が必要です。


また、解約すると不利になるケースもありますので、ご自身の離婚後の保障の問題も含めて、どのように手続きすることが最善なのかを調べた上で、しっかり配偶者と協議しましょう。


財産分与では評価が難しい対象財産も多く、適切な分与を行うのは簡単ではない場合もあります。

そのため、まずは離婚問題を専門とする弁護士にご相談いただき、調査方法等についてアドバイスをもらうことをお勧めいたします。

当事務所でもご相談を承っております。