離婚時に有価証券を財産分与する方法
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。株式や国債などの有価証券も、離婚の際の財産分与の対象です。ただし状況によっては対象にならないケースもあり、現金や預貯金のように簡単に分けられないケースもあるため、正しい評価方法や分割方法についてまとめてみました。
🌸有価証券も財産分与の対象です
有価証券とは、株式や国債、社債など、財産的価値のある証券です。
また、財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して形成した財産を分け合う手続きですが、有価証券も、婚姻後に購入したものであれば財産分与の対象となります。
婚姻中に株式や国債などの有価証券を購入したようなケースでは、夫婦のどちらの名義であっても離婚時に清算するのが基本的な考え方です。
財産分与を行うときには、基本的には夫婦が半分ずつを分け合います。
これは、婚姻中に形成された財産は夫婦が協力して形成してきたものであり、形成の貢献度合いも原則として平等であるとの考え方に立っています。
しかし状況によっては財産分与の対象にならないケースもあります。
🌸有価証券が財産分与の対象にならないケース
以下のケースは財産分与の対象となりません。
1.実家の親から相続した、贈与された
実家の親、親族から有価証券を相続した、あるいは生前贈与された場合には、夫婦が協力して獲得したものではないため対象になりません。
2.婚姻前から持っていた
婚姻前から持っていた有価証券も、夫婦が婚姻中に協力して得たものではないため財産分与の対象になりません。
3.婚姻前から持っていた預貯金で株式を購入
婚姻前から持っていた預貯金は特有財産(それぞれの財産)ですので、それを使って有価証券を購入した場合は、その有価証券もまた特有財産となり財産分与の対象からは除外されます。
4.ストックオプション(新株予約権)
婚姻前にストックオプションなどの権利を付与されており、婚姻後にそれを行使して株式を取得した場合は、婚姻中に取得した株式であっても財産分与の対象にならない可能性があります。
婚姻後にストックオプションなどの権利を付与されており、婚姻中に行使したのであれば対象となります。
一方、婚姻後にストックオプションを取得したにも拘わらず、行使せずに離婚した場合は、金額の確定が困難であることから、双方協議の上で金額などの内容を決めることになるでしょう。
🌸有価証券の評価方法
株式や国債、社債などの有価証券を財産分与するときには「評価」が必要となります。
1.評価の基準時は離婚時または別居時
有価証券を評価するときには「どの時点の価額を基準にするか」が問題となります。
原則としては、「離婚時の価額」を基準にして評価しますが、銘柄によっては株価の変動が大きく、離婚時の価額を基準とすると不公平となるようなケースもありますので、その場合は話し合いにより調整を加えることもあり得ます。
上場株式や国債、社債の場合には評価基準日の終値などを基準にするとよいでしょう。
2.非上場会社の株式の場合
非上場会社の株式の場合は取引相場がありませんので、協議の上いくつかの評価方法の中から選択する必要があります。
会社が解散した場合の価値から評価する方法、配当金額を一定の利率で還元して評価する方法、類似業種の上場企業株式価額を参考にする方法などが考えられます。
🌸有価証券の財産分与方法、注意点
有価証券を財産分与するときには、主として以下の3つの方法から選択します。
1.どちらかが有価証券を取得して他方は別の財産を取得する
夫婦のうち一方が株式を取得して、他方は別の財産を取得する方法です。
2.どちらかが取得して相手方に代償金を支払う
主として株式しか財産分与の対象がないようなケースでは、夫婦のうち一方が株式を取得して相手方に「代償金」を払って清算する方法を取ります。
3.売却して現金化して分ける
有価証券を売却して売却代金を分ける方法です。
この方法が最もわかりやすくスムーズですが、有価証券を離婚のタイミングで売却したくない事情がある場合には、1または2を選択することとなります。
4.譲渡制限株式の場合の注意点
譲渡制限株式とは、会社の承認がないと有効に譲渡ができない株式です。
上場株式や譲渡性のある債券の場合、売却や名義変更も容易ですが、譲渡制限株式の場合には売却や名義変更が難しいケースもあり注意が必要です。
このようなケースにおいては、会社に相談することで、会社が当該株式を買取ってくれる場合や、買い取り人を指定してくれる場合もあります。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら専門家にご相談ください。
有価証券も、婚姻中に獲得したものであれば基本的には財産分与の対象です。
しかし、種類や個別の事情などにより、評価方法や分け方も大きく異なってきますので注意が必要です。
取引相場のある株式と取引相場のない株式とでは評価方法が異なりますし、現物で分け合うのか、代償金を支払うのか、売却するのかなど、話し合って合意する必要があります。
有価証券の財産分与は、その評価方法などについては争いになるケースもありますので、事前に弁護士など専門家に相談してベストな方法を確認しておくことをお薦めします。