離婚時の年金分割はどのように分けるのか?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 




離婚時の年金分割はどのように分けるのか?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。熟年離婚など婚姻期間が長い場合の離婚では、「年金分割」が条件となることがあります。年金分割はどのような仕組みと割合で分けられるのでしょうか?まとめてみました。



年金分割は「全体の半分」を妻に分けるのではありません

会社員として勤務してきた人は、将来受ける年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てとなります。

そして、1961年4月2日以降生まれの男性、1966年4月2日以降生まれの女性の場合は、65歳から年金を受けとれます。


受給できる年金の額は年金加入記録に基づいて計算され、夫または妻に会社員としての厚生年金加入記録がある場合に離婚すると、その厚生年金加入記録(標準報酬)を分割することが可能であり、婚姻期間中の夫婦の標準報酬を合計した上で、最大50%ずつで分割する仕組みとなっています。


標準報酬が多い方から少ない方へ移行しますので、例えば夫が会社員の期間が長く、妻は会社員の期間が少ない専業主婦等であれば、夫から妻へ移行します。


ここで対象となるのは、2階建ての2階部分である老齢厚生年金であり、1階部分・国民年金制度の老齢基礎年金(2020年度満額78万1700円)は年金分割の対象になりません。


そして、理解しておかなくてはならないのは、年金分割は「婚姻期間中だけが対象」ということです。


結婚前や離婚後の期間については対象に含まれないのです。

ですから離婚した場合に、夫婦の年金を半分ずつ分割するわけではありません。


勤務していた期間のうち、婚姻期間がどの程度を占めるのか、婚姻期間中の標準報酬の額がどの程度なのかなどが、分割額を決めるポイントとなります。


そして年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2つがあります。



合意分割とは?

合意分割というのは離婚した元夫と元妻の合意によって年金記録(標準報酬)を分割する制度です。


合意分割する場合には、年金の分割割合を50%を上限に当事者が自分達で決めることが可能です。

夫婦が自分達で合意できない場合には家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。



3号分割とは?

3号分割は、年金制度上の扶養に入っている期間(国民年金第3号被保険者期間)がある場合に、標準報酬を50%ずつに分割する制度であり元夫と元妻の間で合意をする必要はありません。

夫が会社員で厚生年金加入期間(国民年金としては第2号被保険者期間)、妻が専業主婦等で第3号被保険者期間の場合、分割しなければ夫100%ですが、3号分割をすることにより夫50%、妻50%ずつとなります。


そして第3号被保険者だった元妻の請求があれば分割されるのです。


なお、3号分割は制度が始まった2008年4月以降の期間が対象になりますので、それ以前の期間は合意分割により分割することになります。


両方に該当する場合は併せて請求を行うことになります。

なお、合意分割も3号分割も離婚して原則2年以内が請求期限となっています。


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年金事務所等への情報提供請求

離婚後に年金事務所等へ情報提供請求を行うことにより、年金分割をすると、年金記録はどうなるか、どれくらい分割されるかを知ることができます。

手続きをすると「年金分割のための情報通知書」が送付されます。


この通知書には、元夫と元妻それぞれの対象期間標準報酬総額(標準報酬の合計)、按分割合の範囲、対象期間が表示され、50歳以上の場合であれば、分割後の年金の受給見込額も記載されています。


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まとめ:年金分割の金額は重要です

離婚における最大のポイントの一つは、離婚後の生活で経済的に問題がないかどうかです。

離婚においては、財産分与や事情によっては慰謝料なども発生しますが、年金分割についても事前に額のイメージを掴んでおくことが、離婚後の生活の安定につながるでしょう。

年金分割が対象となる方は、離婚協議の際に年金分割の問題も念頭に置いて交渉していくことが必要です。

月々の額は大きくないとしても受給期間が長期にわたりますので、全体的には大きな影響を及ぼすことも少なくないのです。