10年でこんなに変わった令和の離婚原因!浮気が減ってモラハラが増加!
2021年10月更新!兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚原因は10年前とどう変わったのでしょうか?最高裁判所が開示した令和2年の離婚に関する原因別データを、平成21年と比較してみました。
🌸はじめに
最高裁判所では毎年離婚に関する原因別データを開示しています。
これは「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」というデータで、申立人が離婚の動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計しています。
そこで、令和2年の離婚原因と、10年前の平成21年の数値を比較してみたところ、とても興味深い結果となりました。
この10年で離婚原因にはどんな変化があったのか?
そしてこの変化の原因や、今後の推移はどうなっていくのか?
まとめて考察してみました。
※出典:「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf
(注)申立ての動機は,申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計。
🌸男性の申立ての傾向
【令和2年離婚原因別ランキング男性】
※( )内は平成21年と令和2年を比較(令和2年/平成21年として算出)、順位は平成21年との比較
男性の申立て件数合計15,500件←19,027件(81.4%)
1位「性格の不一致」9,240件←11,445件(80.7%)
2位「精神的に虐待する」3,159件←2,591件(121.9%)4位から2位へ↑
3位「異性関係」2,132件←3,395件(62.8%)2位から3位へ↓
4位「家族の親族と折り合いが悪い」1,964件←2,878件(68.2%)3位から4位へ↓
5位「浪費する」1,883件←2,560件(73.6%)
6位「性的不調和」1,740件←2,430件(71.6%)
7位「暴力を振るう」1,454件←1,434件(101.4%)8位から7位へ↑
8位「同居に応じない」1,359件←1,729件(78.6%)7位から8位へ↓
9位「家庭を捨てて省みない」764件←1,174件(65.1%)
10位「生活費を渡さない」686件←544件(126.1%)11位から10位へ↑
🌸男性の申立ての分析
人口、婚姻件数が減少する中、申立て件数もこの10年で81.4%と大きく減少しています。
その中で特に目を惹くのは、妻から夫への「暴力を振るう」=DVが101.4%と増加し、「精神的に虐待する」=モラハラに至っては121.9%と激増していることです。
また、「生活費を渡さない」という項目も126.1%と急増。
これらは、女性の社会進出の高まりや、夫婦間のパワーバランスの変化を顕しているように感じます。
一方、逆に大幅に減少しているのが、不倫や浮気である「異性関係」で62.8%となっています。
「家族の親族と折り合いが悪い」(68.2%)、「浪費する」(73.6%)「家庭を捨てて省みない」910件(65.1%)の3項目も件数的には減少傾向であり、嫁姑問題など家族関係の変化、仕事に関する価値観の変化などが見て取れます。
🌸女性の申立ての傾向
【令和2年離婚原因別ランキング女性】
※( )内は平成21年と令和2年を比較(令和2年/平成21年として算出)、順位は平成21年との比較
女性の申立て件数合計43,469件←50,657件(85.8%)
1位「性格の不一致」16,304件←21,997件(74.1%)
2位「生活費を渡さない」13,235件←12,725件(104.0%)3位→2位へ↑
3位「精神的に虐待する」10,948件←12,618件(86.8%)4位→3位へ↑
4位「暴力を振るう」8,576件←14,556件(58.9%)2位→4位へ↓
5位「異性関係」6,505件←12,504件(52.0%)
6位「浪費する」4,020件←7,720件(52.1%)
7位「家庭を捨てて省みない」3,013件←5,872件(51.3%)
8位「性的不調和」2,808件←4,700件(59.7%)
9位「家族の親族と折り合いが悪い」2,674件←4,429件(60.3%)10位→9位へ↑
10位「酒を飲み過ぎる」2,618件←4,535件(57.7%)9位→10位へ↓
🌸女性の申立ての分析
申立て件数が85.8%と減少する中、その比率以上に大きく減少している項目が多いのが特徴です。
「異性関係」(52.0%)、「暴力を振るう」(58.9%)、「浪費する」(52.1%)、「家庭を捨てて省みない」(51.3%)、「性的不調和」(61.5%)、「家族の親族と折り合いが悪い」(59.7%)「酒を飲み過ぎる」(57.7%)は、それぞれ全体の申立て件数比より激減しています。
一方、「生活費を渡さない」は104.0%と大きく増加しており、「精神的に虐待する」=モラハラは86.8%は高止まりしています。
これらから言えるのは、この10年で「夫が仕事中心で、家庭を省みない生活をして引き起こした浮気や暴力に妻が耐える」という図式が徐々に薄れつつあるということではないかと推測します。
男性の仕事観、家庭観が変わってくる中、暴力、浮気、浪費などの従来型の離婚申立ては減少傾向にあり、依然として多いのが「生活費を渡さない」という経済的な理由と、「精神的に虐待する」=モラハラなのだと思います。
🌸分析結果と今後の傾向予測
平成21年の申立て件数合計は、男性19,027件、女性50,657件と2.66倍であり、令和2年では男性15,500件、女性43,469件と2.80倍となっています。
10年を経てもほぼ同程度の割合で、女性の申立てが圧倒的に多くなっています。
男女とも「異性関係」(浮気、不倫)での申立てが大きく減少していることより、堅実な家庭観へと徐々に変容していることが見て取れます。
一方、「浪費する」、「家庭を捨てて省みない」、「性的不調和」、「家族の親族と折り合いが悪い」、「酒を飲み過ぎる」などの各項目においては、女性が大幅に減少しているのに比し、男性側では減り幅が小さくなっています。
ここでは、夫婦のあり方や社会、働き方の変化、女性の社会進出、核家族化の進展などの各要因により、特に男性の行動様式や意識が変化してきたことが推測されます。
一方、男性側が受ける暴力(DV)、精神的虐待(モラハラ)は大きく増加し、女性が受けるモラハラも高止まりしているため、この問題はこれからも離婚問題の最も重要なポイントであろうと考えられます。
そして全体の申立て件数が減少する中で「生活費を渡さない」の件数が、男女とも激増していることに注目せざるを得ません。
この10年、経済的な理由での離婚はほぼ毎年減ることなく上位に位置しています。
特に令和2年はコロナの影響により、経済的な理由での離婚が増加傾向にあり、今後の動向に注意が必要です。
結局夫婦の意識や生活様式、考え方がいくら変化しても、結婚が経済的な契約であることは変わらないのだと強く感じますし、今後においても、この傾向は続いて行くものと推測されます。
モラハラや経済的理由による離婚の割合が、今後も増加していくことが想定されますので、そこに陥らないよう十分に注意することが肝要です。
一方、これらの原因が現在のパートナーにある場合は、我慢せずに当然離婚すべきという考え方も成り立ちます。
我慢して無駄な時間を浪費する時代は、既に終わっっているのだと思います。
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🌸まとめ:離婚問題で迷ったり困ったりしたら弁護士にご相談ください。
この10年で離婚原因も大きく変わってきました。
変わらないのは女性側からの申立てが圧倒的に多いことと、経済的な理由及びモラハラが常に上位にいることです。
未婚の方は、これらの原因をできる限り避けるパートナー選びをすることをお薦めしますし、既に問題を抱えている方は一人で悩まずに、どこかの時点で一度は専門家である弁護士などに助言を求めることをご提案いたします。