令和2年コロナで大幅に減少した結婚と離婚
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。「コロナ離婚」という言葉が話題となった令和2年。厚生労働省の人口動態統計によれば、婚姻件数は前年より7万8069件減少し、減少率は12.7%、離婚件数は1万5245件減少し、減少率は7.3%となっています。この原因は一体なんでしょうか?
🌸令和2年は結婚も離婚も大幅減少
婚姻件数は前年より7万8069件減少し、減少率は12.7%となっており、また、離婚件数は1万5245件減少し、減少率は7.3%でした。
戦後で記録が残る昭和22年以降では、前年に比べて婚姻件数の下落幅が2桁を超えたのは昭和22年と25年のみであり、非常に稀な事態が発生したと言えます。
令和元年は元号が変わったことで「令和婚」が増加し、前年比3.3%増であったため、令和2年は一定程度落ち込む可能性はありましたが、12.7%の減少は全く想定外の結果でした。
日本では結婚しないと子どもを持たない傾向があるため(法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれる「嫡出子」が約98%を占める)、婚姻の減少や先送りは少子化の加速に直結します。
このため婚姻件数の回復は国の重要課題とされ、政府の抜本的な対策が待たれています。
🌸コロナで結婚が減少した理由
ではどうしてコロナで結婚する人が大幅に減ったのでしょうか?
政府の少子化対策担当者の分析では「新型コロナの影響で結婚につながる出会いが少なくなり、また、結婚式も実施しにくかったのではないか」とのこと。
確かにネットなどでも、「飲み会の減少」「在宅勤務で職場での出会いもない」「婚活イベントが中止」などの声が聞かれます。
近年マッチングアプリを活用した「婚活」が増加傾向にありますが、コロナ感染リスクを考えてなかなか対面で会う機会が作れず、交際が進展しないという悩みもあるようです。
また、コロナ禍の中では「結婚どころではない」という雰囲気があるのも事実。
「すべてはコロナが落ち着いてから」と先送りになっているケースも多いものと思われます。
🌸令和2年にコロナ離婚はあったのか?
🌸令和2年の男女別の離婚申立ての傾向
最高裁判所では毎年離婚に関する原因別データを開示しています。
これは「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」というデータで、申立人が離婚の動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計しています。
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf
そこで、令和元年と令和2年の男女別離婚申立ての理由を比較してみました。
コロナ禍の中で、どんな変化があったのでしょうか?
【①令和2年離婚原因別ランキング男性】
※( )内は令和元年と令和2年を比較(令和2年/令和元年として算出)、順位は令和元年との比較
男性の申立て件数合計15,500件←16,502件(93.9%)
1位「性格の不一致」9,240件←9,958件(92.8%)
2位「精神的に虐待する」3,159件←3,328件(94.9%)
3位「異性関係」2,132件←2,218件(96.1%)
4位「家族の親族と折り合いが悪い」1,964件←2,162件(90.8%)
5位「浪費する」1,883件←2,001件(93.8%)
6位「性的不調和」1,740件←1,963件(88.6%)
7位「暴力を振るう」1,454件←1,496件(97.2%)
8位「同居に応じない」1,359件←1,468件(92.6%)
9位「家庭を捨てて省みない」764件←910件(84.0%)
10位「生活費を渡さない」686件←704件(97.4%)
【②令和2年離婚原因別ランキング女性】
※( )内は令和元年と令和2年を比較(令和2年/令和元年として算出)、順位は令和元年との比較
女性の申立て件数合計43,469件←44,040件(98.7%)
1位「性格の不一致」16,304件←17,242件(94.6%)
2位「生活費を渡さない」13,235件←12,943件(102.3%)
3位「精神的に虐待する」10,948件←11,094件(98.7%)
4位「暴力を振るう」8,576件←9,039件(94.9%)
5位「異性関係」6,505件←6,800件(95.7%)
6位「浪費する」4,020件←4,298件(93.5%)
7位「家庭を捨てて省みない」3013件←3,194件(94.3%)
8位「性的不調和」2,808件←2,893件(97.1%)
9位「家族の親族と折り合いが悪い」2,674件←2,850件(93.8%)
10位「酒を飲み過ぎる」2,618件←2,774件(94.4%)
男女別を合計すると、申立件数は令和2年が58,969件、令和元年が60,542件であり、減少率は2.6%となっています。
離婚件数が7.3%の減少でしたので、離婚申立ての方が減り幅がかなり少ない結果です。
一方男女別では明らかな差が出ています。
男性の減り幅が6.1%だったにも拘らず、女性はわずか1.3%しか減っていません。
しかも女性の2位の「生活費を渡さない」はプラス2.3%と、唯一前年よりも実数が増加しており、コロナ禍での収入面での影響がいかに大きかったかが見て取れます。
また、女性の3位「精神的に虐待する=モラハラ」もマイナス1.3%と減り幅が平均よりかなり低く、コロナによるストレス等が原因であるとも考えられます。
令和2年に離婚が大きく減少したのは、結婚同様先送りがかなりあるのではないかと考えられますが、この離婚申立て理由を分析してみると、コロナの影響が色濃く反映しているように感じます。