財産分与に税金はかかるのか?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚問題で最も心配になることの一つが、金銭に関する問題です。普段は考えることのない税金の問題も気になりますね。離婚して財産分与を受けた際には、税金はかからないのでしょうか?まとめてみましたので、ご参考にされてください。
目次
🌸財産分与に税金はかかるのか?
🌸贈与税がかかるケースとは?
🌸不動産を取得した場合は?
🌸財産分与をする側には税金がかかるケースは?
🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください。
🌸財産分与に税金はかかるのか?
夫婦が離婚した場合には、共有財産を夫婦で2分の1ずつ分けるのが一般的です。
これを財産分与と呼びます。
共有財産が高額だった場合などでは、税金のことが不安になる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし基本的には財産分与を受けても贈与税はかかりません。
例えどんなに高額な資産を受け取ったとしても、贈与税を払う必要はなく申告も不要です。
これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産の清算ための財産分与義務に基づいて給付を受けたものと考えられるからです。
ただし例外的に贈与税がかかるケースもあります。
🌸贈与税がかかるケースとは?
贈与税がかかる可能性があるのは、婚姻中に夫婦が一緒に築いた財産と考えられる金額からみて、受け取る財産分与の金額が、相当額をはるかに超えるケースです。
しかしながら、相当額をはるかに超える金額、というのはどの程度を指すのか一概には言えません。
財産分与はそれまでのさまざまな事情を考慮して額を決定するため、受け取った額が夫婦の共有財産の半分を超えたからと言って、それが必ずしも問題になるわけではないのです。
それでも財産分与の額が、税金対策の離婚ではないかと疑念を待たれるほど想定額を超えるケースでは、贈与税が課される可能性が高くなりますので注意が必要です。
🌸不動産を取得した場合は?
売買や相続、贈与などによって不動産を取得した場合は、不動産取得税がかかります。
しかし離婚時の財産分与の場合は、婚姻中に取得した夫婦の共有財産の清算=清算的財産分与の範囲内と考えられる場合には、不動産取得税の課税対象とはなりません。
一方、不動産の財産分与が慰謝料支払目的=慰謝料的財産分与である場合や、離婚後の生活の援助目的=扶養的財産分与と認定された場合などでは、不動産取得税の課税対象となるケースも考えられます。
もっとも、これに該当する場合でも、その不動産に居住するのならば種々の軽減措置がとられているため、実際に納税が発生するケースは多くありません。
一方、不動産の財産分与を受けたら法務局で「名義変更の登記」をしなければならず、その際に「登録免許税」がかかります。
金額は不動産の固定資産評価額の2%であり、分与をする側、受ける側のどちらが負担しても構いませんが、一般的には分与を受ける側が負担するケースが多いでしょう。
🌸財産分与をする側には税金がかかるケースは?
実は財産分与を「する側」に税金がかかるケースがあります。
不動産を財産分与すると、分与したときの「時価」で不動産を「譲渡した」とみなされるからです。
不動産の時価が取得費用及び譲渡費用の合計額より高い場合には、「譲渡所得税」が発生し、その場合には、金額に応じて「住民税」もかかってきます。
所得税と住民税の合計税率は以下の通りとなっています。
・譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超える場合は 20.315%
・譲渡した年の1月1日に所有期間が5年以下の場合 39.63%
(※復興特別所得税を含みます)
ただし居住用不動産の場合であれば、譲渡所得税の特別控除を受けられるので、3,000万円までであれば譲渡所得税はかかりません。
一般的な家の分与のケースでは、譲渡所得税はかからないことが多いでしょう。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください。
財産分与を受ける場合もする場合も、一般的には税金がかからないことが多いのですが、状況によっては課税されるケースもあります。
もしご心配なようでしたら、念のために弁護士などの専門家に一度アドバイスをもらっておけば安心して協議を進めていくことができます。