死後離婚(姻族関係終了届)とは?|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ

 



死後離婚(姻族関係終了届)とは?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。死後離婚とは、配偶者の死後に役所に「姻族関係終了届」を提出して、義理の両親などとの姻族関係を終了させることを意味します。近年この手続きをする人が徐々に増えつつありますので、そのメリットやデメリットについてまとめてみました。



目次

🌸死後離婚(姻族関係終了届)とは?

🌸死後離婚が増えている理由

🌸死後離婚のデメリット

🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください。



🌸死後離婚(姻族関係終了届)とは?

死後離婚と聞くと、配偶者が亡くなった後に離婚手続きをするのか?と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、そうではありません。

「死後離婚」とは、配偶者の死後に姻族関係を終了させる手続きをすることを意味しています。

姻族関係とは、一方の配偶者と他方の配偶者の血族との関係を言いますので、妻と夫の父母は姻族となります。

離婚をすれば姻族関係は終了しますが(民法728条1項)、婚姻期間中に配偶者が死亡した場合には、姻族関係は継続されたままです。

姻族関係を終了したい場合には、配偶者は「姻族関係終了届」を自己の本籍地又は住所地の市区町村役場に提出することで手続きが可能であり、姻族の同意も不要です。

そしてこの手続き件数は、2009年には1823件だったものが、2019年には3551件となっており、10年でほぼ倍増しています(法務省戸籍統計より)。

どうして死後離婚は増えているのでしょうか?



🌸死後離婚が増えている理由

最も多いと考えられるのが、義理の親との不仲です。

姻族関係が継続していれば、「介護」や「扶養」をしなければならない事情が発生する可能性があります。

例えば義理の親と同居していれば、義理の親が経済的に困ったときに「扶助」しなければなりませんし(民法730条)、同居していなくても、特別な事情がある場合には、家庭裁判所が「扶養義務」を負わせる可能性も考えられます(民法877条2項)。

通常は扶養義務は、夫の死後、義親の扶養義務は同居している嫁より、最も近い直系血族である夫の兄弟が負うべきですが、生活苦などで扶養する能力がない場合などでは、血のつながりはなくても3親等内の親族にあたる嫁が義親の扶養義務を負わされる可能性も全くないとは言えません。

そのため、姻族関係を断ち切りたいと考える人が増えていることが考えられます。

また、義理の親や兄弟姉妹などとの親族付き合いを続けるのが面倒と考える人もいらっしゃると思います。

一方、配偶者本人と不仲であったようなケースでは、死後でもいいから完全に関係を断ち切りたい、法要にも関係したくないという理由で、死後離婚を選択する場合もあるでしょう。

死後離婚を選択したとしても、遺産相続、遺族年金はもらえますので、経済的な面でのデメリットはありません。

それでは死後離婚にはどんなデメリットがあるのでしょうか?


【3か月まで5万円!フェリーチェ法律事務所の離婚サポートプラン!動画が再生されます(音声あり)】



🌸死後離婚のデメリット

デメリットとしては、一旦手続きをすれば取り消しができないことが挙げられますす。

例えばお子さんがいる場合には、この死後離婚の手続き自体に理解が得られないケースもあるでしょう。

お墓参りや法要とも縁が切れてしまうので、なぜ死んだ後にまで縁を切るような手続きをするのか、とお子さんが憤ることも考えられます。

このようなケースでお子さんとの間で事後にトラブルが発生しても、もう一度元に戻すことはできません。

また、配偶者の祭祀(墓地・仏具・位牌)を承継していた場合には、その取り扱いを死後離婚手続き後にどのようにするかを、関係者との間で協議する必要もあり、紛争への発展も懸念されます。

そのため、手続きをする際には、関係者に事前にしっかり説明や相談をして、後々トラブルにならないよう慎重に判断する必要があります。


【KADOKAWAから書籍が発売されました!『誰も教えてくれなかった「離婚しないための「結婚」の基本』】


🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください。

直系血族と兄弟姉妹には、法律上の扶養義務があります。

しかし姻族関係にある者については最初から扶養義務があるわけではなく、家庭裁判所が「特別の事情」と判断がしない限り扶養義務は発生しません。

例えば夫を亡くした妻が、「義理の両親の扶養義務を免れるためには、死後離婚をしなければ!」などと考える必要は通常ありません。

それでも可能性がゼロではないため、不安がある場合は弁護士などの専門家に、現在の状況を詳しく伝え相談することで、アドバイスをもらっておけば安心です。