母親が親権を取れないのはどんな場合?|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ

 


母親が親権を取れないのはどんな場合?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚する際に親権を争った場合、家庭裁判所は母親に有利な決定を下すことがかなり多いのが実情です。しかし母親が親権を取れないケースも一定数存在します。一体どんなケースなのでしょうか?



目次

🌸親権を争った場合母親が有利

🌸母親が親権を取れない理由1:母親の虐待(児童虐待)

🌸母親が親権を取れない理由2:子供の世話を主に父親がしていた

🌸母親が親権を取れない理由3:離婚原因が母親の浮気

🌸母親が親権を取れない理由4:子どもの意思で父親が親権者になることを望んだ


🌸まとめ:親権の問題は一度は専門家に相談を


🌸親権を争った場合母親が有利


日本においては子どもがいて離婚する場合は、夫か妻かどちらかが親権者となり離婚届の親権者欄に記載します。

親権者が決まらないと離婚は成立しないのです。

夫婦間の協議で親権者が決まれば問題はないのですが、双方主張して譲らない場合は調停に進み、不成立の場合は裁判となり、家庭裁判所が親権者を決定します。

このような家庭裁判所の手続きを経て親権者を決める場合には、母親が獲得するケースが多く「親権者を争えば母親が勝つ」と言われているほどなのです。

これは家庭裁判所に「監護の継続性=父母どちらが継続的に子どもの世話を行って来たか」を重視する傾向があるためであり、根底には「子どもの福祉」という観点があります。

どうしたら子どもが現在の環境を大きく変えずに幸せに暮らせるか、ということが重視されるのです。

しかしこのような状況下でも、母親が親権を取れない事例はあります。


一体どうしてなのでしょうか。

それでは主たる4つの理由について解説して行きます。


 

🌸母親が親権を取れない理由1:母親の虐待(児童虐待)

 子どもを母親が虐待していたようなケースでは、当然母親は親権者となれない場合が多いです。


児童虐待は、保護者が子供を身体的または精神的に傷つけることを指します。

児童虐待には4つの類型があり、児童虐待防止法第2条で定義されています。

 

①身体的虐待

子供の身体に外傷ができる、又は外傷ができるおそれのある暴行を加えることです。

具体的には、子供を殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせるなどの行為を行うことを指します。


②性的虐待

子供にわいせつな行為をすること、又はわいせつな行為をさせることです。

具体的には子供への性的行為、性的行為を見せる、ポルノグラフィの被写体にするなどを指します。


③ネグレクト

子どもに食事を与えない、制限するなどの行為や、長時間の放置、保護者以外の同居人による虐待の放置など、保護者としての監護を怠ることです。

具体的には、上述の他、家や車に閉じ込める、不潔にする、病気になっても病院に連れて行かないなどの行為を指します。


④心理的虐待

子どもへの激しい暴言、拒絶的な対応、配偶者への暴力行為など、子供に著しい心理的外傷を与える言動や行動をすることです。 

具体的には言葉による脅し、無視、兄弟姉妹間での著しい差別的扱い、子供の目の前で家族に対して暴力をふるう行為=DVなどを指します。


これらの行為は子供の成長に著しい悪影響をを与えるため、母親が子供を虐待している場合は、子どもの福祉という観点から親権を取れない理由となり得ます。


日常的に母親が子どもに暴言を吐き続けていたことが立証され、母親が親権を取れなかった実例もあり、暴力行為などがない場合でも心理的虐待行為は相当不利に働きます。


 

🌸母親が親権を取れない理由2:子供の世話を主に父親がしていた

家庭裁判所は「子どもの福祉」という観点から、「監護の継続性」を重視する傾向にあります。

これは一言で言えば「現状維持」です。

ただでさえ離婚という大きなトラブルで子どもは傷ついています。

その状況の中で更に大きな環境変化があれば、子どもの成長を阻害する要因となる可能性があります。

 ですから、監護者や育成環境を極力変えないのが家庭裁判所の考え方の基本となります。

日本においては主として子どもの世話をしているのは母親ですが、ケースによっては父親であったり、ほぼイーブンに世話をしている家庭もあります。

このような場合は母親が不利になる場合もあります。

また、何らかの事情で別居する際に、父親が子供を引き取って世話をするようなケースでは、その後母親が不利となること十分にもあり得ます。

もう一つは「法的手続きの順守」という観点です。

例えば違法行為により別居して子供の世話を始めたようなケースなどでは、家庭裁判所は監護の継続性を認めないという判断を下すことがあります。



🌸母親が親権を取れない理由3:離婚原因が母親の浮気


家庭裁判所では、基本的には離婚原因と親権は切り離して考えます。

ですから母親の浮気が原因で離婚することになったケースでも、親権は別問題として捉えます。

しかし浮気相手と出かけて帰宅しなかった、家事育児に支障があった、子どものことよりも浮気相手を優先して行動していたなどの事実がある場合や、離婚後にも浮気相手との関係で子どもの育成環境が十分で整えられない可能性がある場合などは、親権が取れない理由となることがあります。

 浮気をした事実があったとしても、子供の世話に問題がなく親子関係も良好な場合で、離婚後の環境にも問題がないケースでは母親が親権者になる可能性は高くなります。

 


🌸母親が親権を取れない理由4:子どもの意思で父親が親権者になることを望んだ

法律上は満15歳を超えた子供からは、父母どちらを親権者とするか、自らの意見を聴かなければならないと決まっています。

ですので家庭裁判所は、一定の年齢に達した子供の親権者を決める際は、子供の意思を尊重します。

15歳に満たない場合でも家庭裁判所は子どもの意思を尊重する傾向があり、概ね10歳以上であれば子どもの意思の把握に努めているようです。

また満15歳未満の子供の意思を把握する場合は、家庭環境や子どもが通う学校や保育園などの周辺環境も調査し、父母それぞれの陳述内容と合わせ精査します。

なので、15歳未満の子どもの場合は、子ども自身が父親を親権者に希望するケースでも、「子どもの福祉」という観点から母親の方がふさわしいと判断されることもあり得ます。

いずれにしても家庭裁判所では「どちらの親が子供を幸せにできるか」ということを総合的に判断しているのです。 


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🌸まとめ:親権の問題は一度は専門家に相談を

親権は、離婚問題全般の中で最もこじれやすく時間を要します。

そのため、現状を分析してどのような見通しを持ち、それをもとに行動していくかが大切です。

初動を誤ると後々の展開が不利となるケースもあり得るのです。

例えば、児童虐待などの行為があったと認められた場合は、母親が親権者となるのは難しいですが、相手方の主張や行為の程度により判断は大きく分かれます。

母親が離婚原因を作った場合も同様で、どちらに転んでもおかしくない事例もあります。

そのため、自身だけで判断するより、多くの離婚問題を取り扱っている弁護士などの専門家に意見を求め、最終的にどのような決着を迎えるのかを見通した上で行動を組み立てるのが賢明です。

当事務所でもご相談を承っておりますので、悩んだり迷ったりした際にはご連絡ください。