離婚時の親権に子供の意思はどれくらい反映されるのか?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。子どもがいて離婚する場合、どちらの親も親権を希望して調停や裁判となることがあります。そんな時に親権者を決定する判断に、子どもの意思はどれだけ重視されるのでしょうか。まとめてみました。
目次
🌸親権者が決定される際の判断基準
🌸子供の意思はどれくらい反映されるのか?
🌸総合的な判断により決定されます
🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください
🌸親権者が決定される際の判断基準
日本の民法においては、離婚の際には親権は、親のどちらか片方だけに認められ、他方の親は親権を失うと定められています。
これは単独親権制度と呼ばれていますが、この制度には様々な意見があり、離婚後も共同親権を認めるべきだという運動も近年活発となっています。
しかし現状では、双方が親権を希望する場合は、どちらかを親権者として決定しなくてはならず、裁判所では以下のような観点から判断しています。
①継続性の原則
それまで子どもを主として監護養育していた側が、引き続き子育てを継続したほうが良いという考え方です。
子どもが小さいケースでは、母親とのかかわりが大きいため、一般的には母親が有利となりますが、父親が主として監護養育している場合もあり、生まれてからの子どもとのかかわりを具体的に判断することになります。
また、親とのかかわりという点だけではなく、周囲の環境も関係します。
転居や転校によって環境が大きく変わるよりも、それまでの環境を継続させる方が望ましいという判断です。
②母性優勢の原則
母性は必ずしも母親を意味するわけではありません。
家庭によっては、父親が母性的な立場で子どもと関わっているケースもありますので、いわゆる母性的な立場にあった側に親権を認めようという考え方なのです。
しかし現実問題としては、母親が母性的な立場を担っているケースが多いため、母親がかなり有利な状況です。
③兄弟(姉妹)不分離の原則
兄弟(姉妹)がいる場合においては、できるだけ引き離されることなく一緒に養育するのが望ましいという考え方です。
特に離婚によって子どもの環境は激変しますので、子どもが感じる負担をできるだけ小さくするためにも、兄弟(姉妹)は可能な限り一緒に育てるべきと考えられています。
④子の意思の尊重
近年では、特に子どもの意思を尊重すべきだという考えが大きくなっており、親権者指定・変更の審判を行う際には、15歳以上の子については、必ずその意見を聴取しなければならないと定めらています
離婚は夫婦の問題ですが、親権は子ども自身の問題なのです。
しかし、子どもの年齢によっては意思を十分に伝えることができなかったり、また、正直な気持ちを表明することが一方の親に申し訳ない、などという葛藤を抱えてしまうことがしばしばあります。
そのため家庭裁判所では、訓練された調査官が慎重に対象の子どもの意思確認を行っています。
🌸子供の意思はどれくらい反映されるのか?
前項記載の通り、15歳以上の子はその意見を裁判所が聞かなければならないという規定がありますので、ほとんどの場合子どもの意思は反映されます。
また、15歳未満の子どものケースにおいても、小さくて意思疎通ができない場合を除いては、調査官はさまざまな方法で子ども自身の意見を把握し、それを尊重する配慮を行っています。
子ども自身がはっきりと自分の意思を伝えることができ、その親と暮らすことについて客観的にみても特に問題がないならば、ある程度その子の意思が尊重された判断がなされることが多くなります。
そして、その子に年下の兄弟(姉妹)がいるケースにおいては、下の子どもも一緒に生活するように判断される可能性が高くなります。
🌸総合的な判断により決定されます
しかし、すべてが子供の意思を中心に決定されるわけではありません。
子どもの年齢・性別、親から子どもへの愛情やそれまでの関わり方、経済力、祖父母や親戚など監護を補助してくれる人の有無も含め、諸々の事情をすべて勘案して総合的に判断がなされるのです。
現実問題としては、子どもの年齢が小さいほど母親が親権者に決定するケースが多く、経済力はさほど重視されていません。
なお、親権者は一度決定された後でも、家庭裁判所へ親権者変更調停を申し立てることも可能です。
しかし、親権変更のハードルはかなり高く、よほどの明確な事情がなければ認められませんので、手続き上変更することも可能だという理由で安易に決めるのではなく、しっかり話し合って十分に納得のいく判断をする必要があります。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりした場合は弁護士にご相談ください
親権は離婚における最も深刻な問題の一つです。
協議が長引くことも多いですし、調停を経て裁判に進むことも珍しくありません。
子どもにとっては、親が離婚するというだけで大変なショックであり、その上自分自身をめぐって、親同士がもめているという事実は、子どもの気持ちをさらに傷つけるものです。
そのため、現状ではどのような結果となる可能性が高いのかという見通しをしっかり立てた上で、先を見据えて協議を進めることが大変重要となります。
まずは弁護士にご相談いただき、詳細に事情を伝えアドバイスを得ることから始めてみてはいかがでしょうか?