財産分与で相手の隠し財産を探す方法
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚する際の財産分与の基本は、夫婦の共有財産を1/2ずつに分けることです。しかし一部を隠されてしまうと、正しい額での財産分与ができないことがあります。今回はどのようにして相手の隠し財産を探せばいいのかについてご説明していきます。
目次
🌸財産を隠す例
🌸隠し財産を見つける方法
🌸弁護士会照会制度とは?
🌸調査嘱託制度とは?
🌸隠し財産の痕跡を見つけておくために
🌸まとめ:困った時にはまず弁護士にご相談ください
🌸財産を隠す例
配偶者に内緒で財産を隠す場合、次のような形が考えられます。
1.銀行口座に入金
2.株式に投資
3.不動産を購入
4.へそくり
5.書画骨董
6.ペーパーカンパニーを作り、会社のお金として入金
へそくりのように現金でどこかに隠したものや、書画骨董などは現物を押さえるしか方法はありません。
また、ペーパーカンパニー設立のように、事前に周到な計画のもと行われる質の悪い行為については、発見するのは難しいかも知れません。
しかし最も多い1~3のについては、見つける方法があります。
🌸隠し財産を見つける方法
そもそも隠し財産は、そう簡単に発見できるものではありません。
たとえば主として、銀行預金、有価証券、不動産などが隠し財産として考えられるのですが、いずれも通帳や証券、登記簿などの現物を見つけなければなりません。
しかし相手は見つからないように注意深く隠しているケースが多いので、家中を捜索してもなかなか発見できないのが現実です。
そんなときに、隠し財産の見つける方法は大きく2つあります。
一つは「弁護士会照会制度」であり、もう一つが「調査嘱託制度」です。
🌸弁護士会照会制度とは?
まずは弁護士に依頼することで可能となるのが「弁護士会照会制度」です。
これは弁護士が訴訟や裁判所での手続きを引き受ける上で、必要となる資料や証拠を収集するための制度(弁護士法23条の2)を指します。
この制度を利用すれば、財産分与の対象となる次のような項目について照会が可能となります。
預貯金:取引銀行名と支店名がわかれば、口座の有無や取引履歴を照会できます
退職金:勤務先に問い合わせることにより、給与や退職金を確認できます
株式:証券会社に問い合わせることにより、保有株式の銘柄や株数を照会できます
不動産:不動産が所在する市町村に問い合わせることにより、不動産の固定資産税台帳や名寄帳を照会できます
しかし問題点もあります。
この制度を使っても日本全国くまなく調べられるわけではありません。
金融機関なら支店単位、不動産も市町村を特定しないと調査できません。
隠し口座のある金融機関の支店や、不動産を隠し持っていると思われる地域を把握していないといけないのです。
比較的確実に調査可能なのが退職金です。
夫の言っている額が信用できない、というようなケースでよく利用されているようです。
またこの制度は、照会を受けた関係先に法的な回答義務はありませんので、個人情報を理由に回答しない金融機関もあります。
🌸調査嘱託制度とは?
「調査嘱託制度」は、金融機関などに対して裁判所が情報開示請求・調査を行うことを指します。
この制度の利用は、調停や訴訟などの手続きが開始されていることが前提となります。
弁護士会照会制度よりもはるかに高い回答率となり結果が判明しやすいのですが、離婚前や協議離婚では利用できないので注意が必要です。
調停の場合も利用できることは稀ですので、離婚訴訟で威力を発揮する制度といえるでしょう。
また、弁護士会照会制度同様日本全国くまなく調べられるわけではありません
つまりどちらも制度を使う場合も、隠し持っている口座の銀行や支店、不動産がある市町村などを事前に把握していない限り、情報開示を求めることができない、ということなのです。
そこで、やるべきことはまず、隠し財産の痕跡を見つけておくことです。
🌸隠し財産の痕跡を見つけておくために
まだ同居中であれば、普段から家の中をくまなく探すことで、隠し財産の痕跡を見つけてみましょう。
通帳や有価証券、不動産登記簿、現金のへそくりなどは勿論ですが、契約書、明細書などの書類、金融機関、不動産会社などからの郵便物に知らない支店名が記載されていないかなどにも注意を払ってください。
また、金融機関については、把握済の口座からのお金の動きを確認することは必須です。
その通帳から隠し口座へお金を移動させている可能性があります。
履歴にお金の動きがあれば、支店名の把握ができますので、弁護士会照会制度などで調査が可能となる場合があるのです。
株式も同様です。
株式は普段と取引はネット経由でも、口座開設などの際には郵便で書面が届くことが多いです。
配当などの書類も郵送されるケースが多いので、普段から郵便物には注意を払っておいてください。
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🌸まとめ:困った時にはまず弁護士にご相談ください
離婚を考えた時にまずやるべきことは、相手に悟られないように相手の持ち物や相手宛に来た郵便物などを調べておくことです。
相手が時間をかけて計画的に隠そうとすれば、発見するのはどんどん難しくなります。
「弁護士会照会」や「調査委託」など、隠し財産を照会する方法はありますが、結局は「隠し財産がある」ことを把握していないことには利用できないのです。
また、隠し財産はいったん置いておいて、現時点で財産分与の対象となる財産がどれだけあるのかをしっかり確認することが、現実的には最も大切です。
財産分与は離婚してから2年間請求することができます。
もし相手が財産を隠していると思うのなら、離婚後にしっかり時間をかけて徹底的に探っていくこともできるのです。