離婚時に財産隠しをさせない方法|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ

 


離婚時に財産隠しをさせない方法



兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚する際には夫婦で築き上げてきた財産を基本的には半分ずつ分ける「財産分与」を行います。しかし一方が財産を隠してしまうと正当な金額がもらえないケースもあります。この「財産隠し」を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?



🌸財産隠しとは?

財産分与は、離婚をする際に夫婦が婚姻期間中にお互い協力して築きあげてきた財産を分け合う制度です。


基本的な考え方としては半々に分けるのですが、財産分与請求を受ける相手方が、少しでも多くの財産を自分に残したいと考え、正しい額を申告せずにこっそり隠してしまうケースもあります。


これが「財産隠し」です。


不動産など、はっきり形があるものは隠せませんが、現金、複数口座の預貯金、株式など、申告を控えてしまえば相手に気づかれない資産もあるものです。


もし意図的に相手方に「財産隠し」をされてしまえば、財産分与の額が本来受け取るべき金額より大幅に減額されてしまうこともあるため、これでは公平な解決とは言えません。


しかし、財産隠しは法に触れないのでしょうか?



🌸配偶者が財産隠しをしていても詐欺罪や窃盗罪などでは処罰されません


配偶者が財産隠しをしていても、詐欺罪や窃盗罪などでは処罰されることはありません。

これは、夫婦間に「親族相盗例」という法律上のルールが適用されるためです。

「親族相盗例」とは、他人同士では犯罪が成立するような行為を行った場合でも、それが親族の間で行われたケースでは特例として処罰しないというものです。

刑法244条(親族間の犯罪に関する特例)

1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第253条の罪(窃盗罪)、第253条の2の罪(不動産侵奪罪)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

この条文により、配偶者との間で詐欺罪、背任罪、恐喝罪、横領罪に該当するような行為が行われたとしても処罰の対象とはならないのです。

しかし、財産隠しによって財産分与を受ける側が損害を受けたケースでは、財産分与請求に加えて、民事上の損害賠償請求ができる場合もあります。


🌸財産隠しをさせないための財産分与の手続き

離婚時に財産隠しをさせない手続きの手順についてご説明していきます。

1.離婚前に徹底的に相手の財産状況を調べる

最も大切なのはこれです。

離婚を切り出したり、別居を敢行する前に、相手の財産状況を調べておくのです。

預金通帳は勿論、給与明細や確定申告書、証券口座の明細等を極力集めて、画像やコピーなどを保管しておきましょう。

ダイレクトメールにも注意を払い、特に貯蓄や投資に関するものは会社名や支店名をメモしておきましょう。


2.財産開示の申し入れと話し合いをしましょう。

その後離婚を切り出したり、別居したタイミングで財産開示と話し合いを申し入れましょう。

財産分与は夫婦間の問題ですから、原則としては額や方法は当事者間で協議して決定します。

もし相手が財産分与の話し合いに応じない場合には、内容証明郵便で財産分与の請求書を送付しプレッシャーをかけるのも効果的です。


3.家庭裁判所に調停を申立てる

相手が話し合いに応じない場合や、協議がまとまらない場合は、離婚時には「離婚調停」、離婚後には「財産分与請求調停」を、それぞれ家庭裁判所に申立てましょう。


いずれも、調停委員を介して相手方と財産分与についての話し合いを行なうことになり、ケースによっては、裁判所を通じて銀行口座などの相手の財産を調べることができる場合もあります。


調停成立後、相手が結果に従わず財産分与を行わない場合には、相手の財産を差し押さえる強制執行の手続きを行うことも可能です。


4.離婚裁判や財産分与請求審判で財産分与を求める

もし調停が不成立に終わった場合には、離婚時には「離婚裁判」、離婚後には「財産分与請求審判」で財産分与を求めます。

審判が出た後に、相手が結果に従わず財産分与を行わない場合には、相手の財産を差し押さえる強制執行の手続きを行うことも可能です。


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🌸財産の保全処分を求めることもできます

調停や裁判は長期間に及ぶこともあります。

そのため、もしこの期間に相手方が財産を使い果たしてしまったら、調停や審判等で有利な内容を勝ち取れたとしても、実質的には回収できなくなってしまう場合もあります。


その対抗手段として、「保全処分」という方法があります。

保全処分とは、裁判手続きの結果が出る前に相手の財産を確保しておく手続きです。


※この手続きは一定の要件を満たさないとできませんし、原則として保証金も必要ですので、詳しくは弁護士などにお尋ねください。


概要は以下となります。


1.離婚成立前には「民事保全手続」

調停を申し立てる前等に債務者の財産を一時的に処分できないようにしておく手続が民事保全手続です。

民事保全手続には大きく分けて以下の3つがあります。


①民事保全法20条:金銭債権を目的とする「仮差押え」

※債務者(相手方)が銀行口座から預金を引き出せないようにするなど。

②民事保全法23条1項:特定物の引渡請求権などを目的とする「係争物に関する仮処分」

※債務者が所有不動産を処分することを禁止するなど

③民事保全法23条2項:争いがある権利関係について現在債権者に生じる著しい損害又は急迫な危険を避けるために暫定的な措置をすることを求める「仮の地位に関する仮処分」

※債権者(当方)の生活が困窮しているため、当面の生活費として財産分与の仮払いを求めるなど。


2.審判前の保全処分(離婚成立後)

家事事件手続法105条に規定されており、審判が確定する前に財産を処分されてしまわないように、審判に先行して財産を確保しておく手続きです。


また、財産分与請求権は、離婚成立から2年を経過すると消滅します(民法768条2項ただし書、除斥期間)ので、注意しましょう。


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🌸まとめ:財産分与で困った時は弁護士にご相談ください

離婚時は勿論のこと、離婚後であったとしても、相手が財産を隠しているという疑いがある場合には、まずは弁護士へご相談ください。

財産隠しが疑われるケースでは、「相手の財産がどこにあるのか」「どのくらいあるのか」「相手の財産の評価ができず額が不明」などの点が問題となります。


実務経験が豊かな弁護士から、的確なアドバイスを得ることで、これらの問題を解決しやすくなります。

また、正式に弁護士に委任することで、相手が財産隠しを断念する場合もありますので、まずは現在の状況を弁護士に伝え進め方を一緒に考えていくところから始めてみてはいかがでしょうか。