卒婚とは? 卒婚するメリット、デメリットは?|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ

 



卒婚とは? 卒婚するメリット・デメリットは?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。最近「卒婚」という言葉を耳にすることがあります。卒婚とは?卒婚のメリット、デメリットは?契約書は必要?卒婚したい人はどれくらいいる?まとめてみましたのでご参考にされてください。



🌸卒婚とは?

「卒婚」というのは、2004年に出版された「卒婚のススメ」(杉山由美子著)で使用された言葉であり、杉山さんの造語です。

離婚とは違い、婚姻関係を維持しながらも、夫婦がお互い自由に生活していくことを指しています。


今までの夫婦関係や家庭環境を一旦リセットして、お互いの生活を作り直すことを意味し、パートナーとしての関係を緩やかに維持しつつも、それぞれが自由な生き方を楽しむという新しい夫婦のカタチの一つです。



🌸卒婚と離婚の違いは?

離婚は婚姻関係そのものを解消し、法的にも他人に戻り、人生そのものをリセットしますが、卒婚では婚姻関係はそのまま維持し、生活だけを別々にします。


ですので、別居する夫婦もいれば、同居を継続したまま卒婚をするケースもあります。


卒婚は主として夫婦関係が上手く行かなくなった場合に行われますが、中には、それぞれが自分の時間を大切にすることで絆を深めるために、敢えて卒婚を選択する方もいらっしゃいます。


その意味では「卒婚」は、幅広い考え方で自由に行われるものと言えるでしょう。


離婚するには様々な手続きが必要であり、相当な労力もかかります。

しかし卒婚ならば、夫婦生活を解消するだけですので、すぐにでもできるのです。


例えば、夫婦が別々に暮らしても子どもや孫との関係性はなるべく維持したい方や、離婚で世間体が悪くなることを気にする方には良い方法と言えると思います。



🌸卒婚したい理由

卒婚したいと思っている方は、こんな理由を挙げられています。


1.パートナーの世話をしたくない


関係性が損なわれた夫婦にとって、愛情を感じられない中で相手の世話をすることは苦痛でしかありません。

長い老後を有意義に過ごすために、卒婚が選択される方が増えているのです。


2.自由になりたいから


趣味や仕事、友人との付き合いなど、自分が楽しいと思えることや、やりがい、生きがいを感じられることに時間を費やしたいと思うのは誰しもそうだと思います。


パートナーの存在がそれを大きく阻害しているケースでは、大きく環境を変えて自由になることが、残りの人生を有意義に過ごせる唯一の道だと思ってしまうようです。


3.今までずっと我慢してきたから


実は、この理由が最も多いようです。


例えば、夫が定年を迎えるタイミングで卒婚を考える妻は、それまでの結婚生活の不満が溜まりに溜まっているケースがほとんどです。

モラハラなどの夫の行動にも、子どものためにと我慢に我慢を重ねて耐えてきた妻が、最後の逆襲で卒婚を切り出す例は多いものです。


不満の理由は様々ですが、「夫婦の老後の暮らしに全くイメージが湧かない」というのが偽らざる心境のようです。




🌸卒婚のメリットは?

卒婚の主なメリットは以下が挙げられます。


1.入籍したまま


婚姻関係は継続したままですので、面倒な手続きは全く必要ありません。

パートナーと話し合うだけです。


相続関係もそのまま維持されますので、面倒な手続きや、財産分与などの損得に頭を悩ますこともありません。


また、お互い気が向けば元に戻ることも容易ですので、「お試し」のように数年間だけ卒婚してみることもできるのです。


2.家族関係は維持するがお互いに干渉しない


卒婚しても家族であることには変わりはありません。

例えば、子どもや孫とのイベントなどは、一緒に楽しむことも可能です。

それでも互いの生活には干渉しない「良いとこどり」ができるのです。


5.世間体を保てるし、子どもも傷つけない


離婚をすると、当然親族や友人にも説明が必要です。


卒婚であれば何のアナウンスも不要ですし、冠婚葬祭などにも同行することができます。

また一番大きいのは、子どもの理解が得られやすく、子どもや孫に悲しい思いをさせる度合いが軽減されることなのではないでしょうか。

いくつになっても、親の離婚は子どもの心を傷つけるものです。


また、親が存命の場合には、年老いた親に無用な心配をかけないというのもメリットと言えるでしょう。



🌸卒婚のデメリットは?

卒婚の主なデメリットは、以下が挙げられます。


1.新しいパートナーが作りにくい

当然新しいパートナーを作ることは不貞行為となりますので、例えば別居生活となったとしても完全な自由とは言えません。


2.十分な生活費がないと生活が難しい

卒婚には同居したまま不干渉とする「家庭内卒婚」と、別居してそれぞれが生活する「別居卒婚」があります。

できれば「別居卒婚」とすべきでしょうが、家賃や光熱費、通信費など多額のお金が必要となりますので、家計の状況に応じた検討が必要です。


3.完全な離婚につながることがある


卒婚をすると、離婚につながるリスクが高くなるのは仕方のないことでしょう。


特に別居卒婚の場合は、主として夫側が不満を募らすケースが多いようです。

生活に不便を感じ新しいパートナーを探したり、不満が憎しみに変わりいっそのことスッキリ離婚しようかと考えることもあるでしょう。



🌸卒婚に契約書は必要か?



卒婚をすることになった場合の条件などは、特に口頭だけの約束で構わないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし決めなくてはいけないことはかなり多く、時間の経過で状況も考え方も変わる可能性があります。

後々トラブルにならないよう、合意した内容は協議書や契約書にしておかれることをお薦めします。

検討すべき項目は以下の通りです。

1.お金の問題について

卒婚後はそれぞれ別々に生活費を管理することになりますので、毎月の収入や現在ある資産を当面どのように分配するかは決めなくてはなりません。

また、持ち家など共有財産の管理は勿論、税金の支払いなど、細かい点についても極力決めておくようにしましょう。

卒婚後にお金のことでもめるのは絶対に避けるべきです。


2.病気や手術、介護が必要な場合について

卒婚をしても、法的には夫婦のままですので、配偶者に対する法的な扶養義務や相互扶助義務は存在します。

ですので、もしどちらかが病気になったり介護が必要になったりした場合に、どう対処するかは決めておくべき項目です。


3.相続やお墓について

卒婚は婚姻関係はそのまま継続していますので、相続権もそのままであり、一方が亡くなったときには、他方は法定相続人となります。

配偶者は、原則として財産の2分の1を相続することが認められていますので、そのままで良いのか条件を変えたいのかの確認を念のためにしておけば安心です。

また、それと一緒にお墓の問題も話し合っておきましょう。
一緒のお墓に入るのか、別々にするのかということです。

一緒のお墓に入りたくないと希望されるケースも意外に多いものです。


4.婚外恋愛について

あまり触れたくない問題ですが、実は重要なのがこの問題です。

卒婚をすれば自由になりますので、配偶者以外と恋愛すること(婚外恋愛)の可能性が出てきます。

しかし法的な夫婦関係は継続しているため、婚外恋愛は問題があります。

特に、性交渉やそれに類似する行為まで及んだケースでは、不貞行為となるため、慰謝料請求の対象となることが考えられます。

民法で定められた離婚事由にも該当しますので、相手から離婚を求められることもあり得ます。

後々のトラブルを避けるためにも、「婚外恋愛の可否」は話し合っておくべき事項なのです。


これらの項目について合意をしたら、「卒婚契約書」として文書を交わし双方捺印しておきましょう。

決まった書式はありませんので、もし内容が法的に有効かどうか不安な場合には、弁護士にご相談ください。


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🌸卒婚したい人はどれくらいいるの?

婚活・恋活や街コンなど中心とする男女の出会いメディアe-venz(イベンツ)を運営するノマドマーケティング株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:三輪賢治)では、全国の1000名の30歳〜59歳の既婚男女1,000名を対象に卒婚したい人ってどれくらい!?「生活費」「別居卒婚or家庭内卒婚」「期間」についてのアンケートを実施しています。

【アンケート調査概要】

調査方法:インターネットアンケート

調査期間:2021年10月11日 ~ 2021年10月11日

調査対象:全国30歳〜59歳の男女

有効回答数:1000(男性445名・女性555名)


・アンケート内容

1.卒婚をしたいと思いますか?

Q.1のアンケートでは約3割の既婚者の方が卒婚をしたいという結果になりました。

はい :男性106名(10%)

    女性177名(18%)

いいえ:男性339名(34%)

    女性378名(38%)


卒婚をしたいと答えた方の年齢別データは以下のとおりであり、年代が上がることによって卒婚を考える人が増えるということが顕著にわかるデータとなっています。

30代 22%

40代   36%

50代   41%


2.実際に卒婚をしていますか?

卒婚していると答えた方は7%の58名(男26名、女32名)でした。

 したい方が約3割いたのに対して、実際に卒婚をしている人は7%しかいないという結果です。

このうち家庭内卒婚は70%(男30名、女18名)、別居卒婚は30%(男6名、女14名)となっています。

この結果から、卒婚をしたいと考えている人は多いものの、実際には何らかの理由により一部の人しか実行できず、また形態も家庭内卒婚が圧倒的に多いということがわかります。

※参考元:「卒婚って何!?卒婚したい人ってどれくらい!?「生活費」「別居卒婚or家庭内卒婚」「期間」について徹底調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000059676.html


卒婚ができないのには、金銭的な問題、子どもとの関係など様々な理由があるのだと思いますが、卒婚予備軍の方は意外に多いと感じさせられる結果です。


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🌸まとめ:卒婚は新しい夫婦のカタチの一つ

夫婦関係が上手く行かなくなった時、我慢するか離婚するかの二択で考えるのではなく、「卒婚」という新しい選択肢を検討することは有意義であると感じます。


ゆるやかに夫婦生活だけを解消し、別々に自由に生きることは、豊かな人生を送ることにつながる場合もあるでしょう。

離婚すれば子どもや孫などとの関係性が難しくなるケースもありますが、卒婚であれば、その点においても比較的穏やかな変化なのだと思います。


時代が変わり、夫婦のカタチも多様になって来ました。

ただただ我慢する時代は終わったと言えるのかも知れません。

離婚だけが選択肢ではありませんので、お困りの際は一度弁護士など専門家へのご相談をお薦めします。