離婚時のペットの所有権(親権)は?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚してもペットは絶対手放したくない!と思う方は多いものです。もし夫婦の双方がペットの引き取りを希望する場合には、一体どうしたらいいのでしょうか?法的なペットの位置づけとは?まとめてみましたのでご参考にされてください。
🌸ペットは物=動産の扱い
しかし、家族同然に暮らしてきたペットであったとしても、ペットは法律上は物=動産として扱われます。
つまり、ペットには人間の子どものような「親権」という考え方はないのです。
ペットをどちらが引き取るかを決める際には、財産分与の対象として、どちらが所有権を有するのかをまず話し合うのが基本です。
🌸特有財産なのか共有財産なのか
一方、結婚した後に夫婦が共同で築いた財産は「共有財産」です。
ですから、当該ペットが婚姻以前から片方が飼っていたなら、その人の特有財産となりますし、婚姻後飼い始めたならば共有財産となり、財産分与の対象となります。
中には、「ペットの購入費用や餌代はすべて自分が負担していた」「世話はすべて自分がやっていた」など、特有財産だと主張する方もいらっしゃるかも知れません。
しかし婚姻後に飼い始めた場合は、一般的にはペットは共有財産として、夫婦のどちらもが引き取る権利を有してると解釈するのが妥当と思われます。
🌸どちらがペットを引き取るかを決める方法
どちらがペットを引き取るかについては、他の財産分与と同様に夫婦間で話し合って決めるのがが基本です。
財産分与の考え方は、原則として1/2ずつ分けることです。
しかし、ペットは土地や建物などと同様に、分けられない財産です。
離婚時の財産分与で、分けられない財産を平等に分配する方法は、主として2つ挙げられます。
1つは当該財産を売却し、換金して売却益を1/2とする方法であり、2つ目は一方が財産をそのまま引き取り、他方に同等の金銭やその他の財産で補てんをする方法です。
1つ目の方法は当然ペットには合致しないやり方なので、一般的には2つ目の方法がとられます。
ペットを金額に換算したり、他の財産と比べたりするのは、納得がいかないかも知れませんが、法的な考え方としてはこれ以外に解決方法はありません。
ペットを渡す代わりに、他の財産をもらうというような取決めをするのです。
🌸ペットを引き取った方は、相手に養育費を請求できるか?
ペットを育てるにはお金がかかります。
餌代は勿論、医療費などもかなり高額となる場合があります。
そのため、ペットを引き取った側は、養育費として毎月費用を負担してほしいと思うかも知れません。
しかし、法的には離婚後のペットに関する費用の負担を、相手方に請求することはできません。
「養育費」は子どもに関する費用です。
親には子どもを育てる義務があります。
そのため、離婚して親権を取らなかったとしても、子どもを育てるためにかかる費用を「養育費」として負担しなくてはならないのです。
一方、ペットは家族同然に暮らしていたとは言え、法的には「もの=動産」という位置づけです。
ですので、ペットに関する費用のすべては、所有者となった側が負担するのが基本的な考え方となります。
例えば、離婚して財産分与で不動産を取得したとします。
不動産には固定資産税が毎年発生しますが、これを相手に請求することができないのと同じことなのです。
とは言うものの離婚協議の中で、双方が納得した上でペットの養育に関する費用の取決めを行えば、支払いを受けることは問題ありません。
また、例えば子どもとの「面会交流」のように、定期的にペットに会いたいと思う方もいらっしゃると思います。
そのような場合は、ペットの養育に関する費用負担の話し合いと一緒に、面会交流の方法や回数などについても取決めを行うのが良いと思います。
実際に、月に8回ペットの犬と会う取り決めをして、散歩を楽しんでいる方もいらっしゃいます。
🌸もしどうしても決まらなければ調停や裁判で
離婚協議が夫婦間でまとまらない場合は、調停や裁判で決めることとなります。
ペットに関しても財産分与問題の一つとして、調停、裁判で争うことが可能です。
その際には、「どちらがペットの引き取り親としてふさわしいのか」という観点から判断されます。
例えば、それまでの世話の状況や、どちらにペットが懐いているか、離婚後の生活環境や収入の状況などが考慮されるものと考えられます。
🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士にご相談ください。
ペットは家族です。
愛情が深いほど激しい争いになるケースもあります。
ペットの立場に立って考えれば考えるほど、絶対に譲れない!と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかしペットの親権問題は、法的には財産分与の一つです。
話し合い、調停、裁判と進む中では、必ず決着する問題なのです。
そして協議離婚の場合も、調停、裁判と進んだ場合においても、離婚協議書の中にしっかりペットに関する条件も記載し、後々トラブルとならないようにすべきです。
迷ったり困ったりした場合は、経験豊富な弁護士へのご相談をお薦めしています。
当事務所でも承っておりますので、お気軽にご連絡ください。