嫡出推定とは?無戸籍問題の原因?
🌸無戸籍問題とは?
🌸嫡出推定とは?
🌸嫡出性を否定する手続き
🌸無戸籍の問題点
🌸法制審議会の親子法制部会が、中間試案をまとめました
🌸まとめ:現状に即した改正を!
無戸籍問題とは?
「無戸籍問題」とは、日本国内で戸籍がない状態のまま生活している人がいるという問題です。
日本においては、戸籍法により、子どもが生まれた際には、出生日から原則14日以内に子どもの出生届を役所に提出しなければならないとされています。
出生届が受理されると子どもの戸籍が作られますが、「無戸籍問題」は、何らかの理由により出生届が提出されていないか、または提出しても受理されないのままの状態になっていることにより発生しています。
このうち多くは、出生届が提出されないことが原因なのですが、では、なぜ、出生届が提出されないのでしょうか?
大きな原因は、「嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)」=いわゆる300日問題にあると言われています。
🌸嫡出推定とは?
妻が婚姻中に夫以外の男性の子を懐胎した場合には、もし仮にその後離婚した場合であっても、離婚後300日以内に子を出産した際には、民法第772条(嫡出推定)の規定により、子は元の夫の嫡出子と推定されてしまうため、子の出生届を提出した際には、そのこどもは元の夫の戸籍に入ってしまうのです。
例えば、離婚後に出産した元妻が、元夫に出産の事実を知られたくない事情があった場合には、子が元夫の戸籍に掲載されることを避けようとして、出生届をしないということを選択せざるをえません。
これにより戸籍の無い子どもが発生していると言われてるのです。
🌸嫡出性を否定する手続き
嫡出性を否定する手続きとしては、原則として元夫から嫡出否認の訴えを提起してもらう必要があります。
ただし、妻が子を懐胎した時期において、夫と別居中であった等、夫婦間で性的関係を持つのが物理的に不可能であったような事情が明確である場合には、この規定が及ばないとされ、元夫の嫡出否認の訴えがない場合でも、元妻側から「親子関係不存在確認請求」や「認知請求」の手続を行えば、戸籍上元夫の子とはしない取扱をすることができます。
しかし問題となるのは、妻がDV(家庭内暴力)を受けていたようなケースです。
妻が元夫から逃れて、離婚後も身を隠しているような場合においては、どうしても元夫との関わりを持つことは避けたいため、出生届を提出することができないのです。
さらに元夫に対して「親子関係不存在確認請求」をすることも、現実問題としては難しいケースもあり、そうなると結局どうすることもできず、子どもが無戸籍のままとなってしまいます。
🌸無戸籍の問題点
しかし教育委員会は小学校に入学する区域内の子どもを把握するため、住民基本台帳に基づいて「学齢簿」を作成するため、無戸籍の子どもは住民票がないケースも多く、学齢簿に基づく通知などが来ないことで、就学の機会を逸する可能性があります。
また、各種手当の受給手続き、銀行口座開設、結婚する際、パスポートの取得などの際には支障を来すため、いずれは無戸籍の問題が顕在化して大きな苦痛となるのです。
🌸法制審議会の親子法制部会が、中間試案をまとめました
本件に関して、2021年2月に法制審議会の親子法制部会が、中間試案をまとめました。
試案においては、婚姻から200日以内に生まれた子も夫の子と推定し、また、離婚から300日以内に生まれた子は原則、元夫の子としつつも、母が別の男性と再婚している場合は再婚後の夫の子と推定するという例外規定を設けることとしています。
そして「嫡出推定」による父親と子どもの関係を解消することができる「嫡出否認」の手続きについて、申し立ての権利を子どもにも拡大する方向です。
しかし、この中間試案では、再婚せずに事実婚となっている場合に生まれた子どもについては対象外となっており、さらなる検討が求められています。
法務省では、把握している無戸籍の人の数を1月時点で901人としていますが、一説によれば実際には1万人以上とも言われています。
法制審は意見公募を経て、最終案を答申し、2022年の国会に改正案が提出される見通しです。
🌸まとめ:現状に即した改正を!
嫡出推定による無戸籍問題は、1世紀も前の明治民法の規定を、そのまま引き継いできたことにより、大いなる矛盾が発生している残念な問題であると言えます。
現代はDNA鑑定が可能であり、親を認定する手法が当時とは全く異なる時代となったにも関わらず、不幸な事例が現出している実態に即し、早期に法改正をすべきです。
今回の改正により、不幸な無戸籍問題が解消されるよう切に願っています。