子連れ離婚のチェックポイント
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。子供がいらしゃる方が離婚する場合、事前に様々な項目についてあらかじめ検討しておく必要があります。具体的にはどんなチェックポイントがあるのでしょうか?まとめてみました。
🌸離婚前に検討すべきポイント
1.親権者
未成年の子どもがいる場合は、何といっても離婚後の親権者の問題が第一です。
離婚届には親権者の欄がありますので、親権者が決まらなければ離婚手続きはできません。
こちらが親権者となることを希望しており、相手が同意してくれるなら問題はないのですが、相手も親権を主張して譲らない場合は、双方で話し合って決めなければなりません。
双方が譲らないケースでは、調停、裁判で決定することも視野に入れる必要があります。
最終的には、これまでの養育実績、離婚後の養育環境、子どもの意思などが考慮され、どちらが子供の利益になるかという視点で決定されますので、まずそこをベースに話し合いを進めてください。
2.養育費
子どもの親権者になる場合には、相手に対して養育費を請求できます。
養育費の金額については裁判所の定める相場の金額がありますので、それらを参考に事前に調べておきましょう。
この金額をベースとして話し合いを行い、金額を確定させる必要があります。
3.面会交流方法
こちらが親権者となった場合には、相手に子どもとの「面会交流権」が認められます。
面会交流は離婚後にトラブルとなることがとても多い項目です。
具体的な頻度や面会交流の方法、行動に関する取り決めなどについて、できる限り細かく合意しておくと良いでしょう。
4.離婚協議書の作成
双方で話し合いを行い合意した場合は、必ず離婚条件をまとめた離婚協議書を作成しましょう。
中には口約束で文書を交わさない方もいらっしゃいますが、離婚後に約束が守られずトラブルになることが多くあります。
そして離婚協議書は、「強制執行認諾文言付き公正証書」とすることを強くお薦めします。
強制執行認諾文言の約款は、「契約が履行されない場合はただちに強制執行を申し立てることを認めます」という趣旨の条項です。
強制執行とは、債務者が支払いに応じなかった場合に、債権者が裁判所に申し立てる手続きであり、強制執行を申し立てることで、債務者の財産を差押えることが可能になるのです。
強制執行認諾文言がある公正証書では速やかに強制執行の申立てができますので、母子家庭で問題となっている養育費の不払い問題などに大きな効力を発揮します。
また、強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことは、相手への心理的圧力として機能する側面もあります。
🌸離婚時にやるべきチェックポイント
1.離婚届
協議離婚する場合は、役所に離婚届を提出します。
夫婦双方がが自署で署名押印をして必要事項を記入した上、2人の証人にも署名押印してもらう必要があります。
2.離婚後の戸籍
婚姻時に相手の戸籍に入った方は、離婚後の戸籍をどうにするか決める必要があり、元の戸籍に戻るのか、自分一人の新しい戸籍を作るかを選択できます。
自分の戸籍を作る場合には、新しい本籍地も指定しなくてはならないため、離婚届を提出するまでに本籍地をどこにするか検討しておきましょう。
3.離婚後の姓
婚姻時に相手の戸籍に入った方は、、離婚後の姓を選択できます。
婚姻時の姓のままを継続したい場合は役所で「婚氏続称届」を提出しますが、提出しなければ自動的に元の姓に戻ることとなります。
なお婚氏続称届は離婚後3ヶ月以内の提出が義務づけられており、もしこの期限を過ぎると家庭裁判所で「氏の変更許可申立」という手続きを行わなくてはなりません。
🌸離婚後にやるべきチェックポイント
1.健康保険・年金
相手の社会保険の被扶養者となっていた場合には、離婚後に健康保険や年金の加入手続きを行わなくてはなりません。
親権者になる方は、子どもの健康保険も変更する必要がある場合もあります。
勤務先の社会保険に入る場合は、会社で手続きをしてもらえますが、国民健康保険に入る場合は、元の配偶者に「資格喪失証明書」を取得してもらった上で、役所で国民健康保険加入の手続きを行います。
年金は年金事務所に行って国民年金の加入手続きを行いましょう。
2.住民票、世帯主の変更
離婚して住所が変わる場合は、住民票を異動させる必要があります。
同一市町村内の異動か他の市町村への異動かで手続きが異なりますが、もし相手が出ていって世帯主が変わるようなケースでは、世帯主変更の手続きを行います。
3.子どもの戸籍と姓の変更
母親が親権者になる場合、子どもの戸籍と姓に注意が必要です。
母親が結婚時に父親の戸籍に入っていた場合には、手続きをしないと離婚後も子どもの戸籍は父親の戸籍のままで姓も父親と同じとなります。
母親の戸籍や姓にする場合は、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」を行う必要があります。
手続きが認められた後、役所へ審判書と確定証明書を持参して届出を行うことで、子どもの戸籍が母親の戸籍に入り、姓も母親と同じとなります。
このケースでは、実家の戸籍ではなく自分を筆頭者とする戸籍を編成しなくてはなりません。
4.児童手当の受取人変更
児童手当が婚姻時に父親が受給者となっていた場合には、受給者を変更してください。
5.行政から受けられる手当や制度利用の各種申請
例えば所得が低いひとり親となった場合には行政からの各種支援が受けられます。
児童扶養手当、住居手当、医療費助成、就学支援金などですが、中には公共交通機関で割引を受けられたり、健康保険料の減免措置が適用されたりするケースも存在します。
自治体によって助成制度の内容は異なっていますので、どのような制度を利用できるのか、役所で相談しておけば安心です。
6.保育所、幼稚園、学校の手続き
離婚後の生活の中で、子どもの保育所、幼稚園、学校に関して、入所、入園、転校などの手続きが必要となる場合は、事前に検討して手続きを行っておく必要があります。
離婚後に仕事をする場合には保育所への入所を希望する方も多くいらっしゃいます、
ひとり親の場合、優先的に公立の保育所に入所できるケースもありますので、早めに調べておけば安心です。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士に相談を
これまで述べて来たように、子どものいる離婚では事前に調査、検討しておかなければならない項目がとても多くあります。
具体的に進めなければならない手続きもたくさんありますので、離婚後に慌てないように周到に準備しておかなければなりません。
特に親権の問題など、合意するまでに時間を要する項目もありますので、もし離婚協議がうまく進まない場合や離婚協議書や離婚公正証書の作成方法が不安な場合などは、一度弁護士に相談されることをお薦めします。
当事務所でも承っております。