離婚を切り出す前に準備すべきことは?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚を決意した時、感情に任せて相手に離婚を切り出してしまうと、その後思ったように進展せず後悔してしまうケースが多くあります。では、離婚を切り出す前にはどんな準備が必要なのでしょうか?まとめてみましたのでご参考にされてください。
🌸いきなり離婚を切り出すのはリスクがあります
何の準備もなくいきなり離婚を切り出すのはとても危険であり、その後大きなリスクを抱える可能性があります。
相手が激高して話が全然進まないこともありますし、無理に進めようとすると相手から不利な条件を押し付けられ、金銭的に非常に苦しくなったりすることもあるのです。
ですからまずは冷静に、相手が離婚を受け入れる可能性があるのかどうかと、離婚後の生活設計をしっかり考えてみる必要があります。
現在は夫婦のカタチも多様化しています。
離婚するだけが結論ではなく、別居婚、卒婚など、籍はそのままにして別々の暮らしをすることを選択される方も増えつつあります。
その最も大きな背景には経済的な問題が挙げられます。
離婚後の生活設計が成り立たないのであれば、離婚以外の選択肢ももう一度考えてみる必要があるでしょう。
勿論、DV(家庭内暴力)やモラハラ(言葉の暴力)、不貞行為(浮気、不倫)などのはっきりとした理由がある場合には、離婚するのが最善かも知れません。
ですがその場合でも、事前にそれらの行為が認定されるための証拠を収集しておく必要があるのです。
いきなり準備をせずに離婚を切り出した場合、相手が極度に対立的となり、証拠の隠滅や財産隠しなどの行為を行う可能性もあります。
ですから、まずは相手に離婚の意思を悟られる前に、必要な調査や準備を行っておくべきなのです。
何の準備もなく離婚を切り出すと、交渉が長期化することも多くあります。
離婚協議はなるべく長期化させずにスムーズに進める必要があります。
期間が延びれば延びるほど、精神的なストレスも増えますし、金銭的な問題も発生しがちです。
そんな中で少しでも早く決着をつけたいと思えば、不利な条件に応じざるを得なくなってしまいます。
しかし、しっかり時間をかけて離婚原因における証拠を揃えておけば、相手が言い逃れできなくなりますし、財産分与における金額を調べておくことで、金銭的な対立を防ぐこともできます。
誰が見てもはっきりわかる状態で証拠が用意されていれば、相手の勝手な言い分が通りづらくなり、それが調停や裁判でも利用できるため優位に立つことが可能となります。
また、しっかり調べてみる中で、新たな事実が判明することも多くありますので、まずは冷静になってなるべく詳細に見直してみてください。
🌸離婚理由についてしっかり検討する
それでは、離婚を切り出す前に準備すべきことを記載していきます。
まずやるべきは、離婚理由についてしっかり検討することです。
離婚は双方が合意すれば成立しますが、もし相手が同意しなかった場合には、調停や裁判に進むことになります。
その場合には以下の5つの法定離婚事由(民法770条1項)に該当しなければ離婚は認められません。
1.配偶者に不貞な行為があったとき
※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合など
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
※DV、モラハラなど様々な理由により婚姻関係が破たん状態にあること
このいずれかに該当すると裁判所が判断した場合は、双方の合意がなくとも離婚は成立します。
しかし該当しない場合には、裁判での離婚は成立しないことになります。
もし、あなたが直面している離婚したい理由が法定離婚事由に当てはまるかわからない、当てはまるような気がするが不安、というようなケースは、弁護士などの専門家に相談してみましょう。
🌸経済面での準備をしておく
現実問題、最も考えておくべきことがこの経済面です。
特に、専業主婦の場合は新たな仕事や生活環境を準備する必要がありますし、逆に生活を支える立場の場合には、離婚の際の財産分与、慰謝料、養育費の支払いなどにより困窮する可能性もあります。
また、離婚の協議を進める中では、別居費用の問題も発生しがちです。
離婚が成立するまでの一定期間は、別居となるケースも多くあります。
その場合には別居の関する引っ越し費用や、住居を確保するための費用、生活費など大きな金額が必要です。
また、仕事を探して新たに生活を立て直すためにはある程度の期間を要する場合もあります。
ですから、離婚を考えた時には、ある程度自分の自由になるお金をあらかじめ用意しておかなくてはなりません。
相手に気づかれないよう、なるべく貯蓄しておきましょう。
🌸相手に請求可能なお金や資産の調査
離婚時には、請求可能な項目があります。
状況に応じて何をどれぐらい受け取れるのかを、しっかり検討してリストアップしておきましょう。
離婚後の生活のめどを立てることができます。
1.婚姻費用
双方の協議により離婚を前提とした別居をすることになった時などには、相手に生活費を請求することができる場合があります。
金額は家庭裁判所でも活用されている基準(算定表)に基づいて決定されることが多いですが、相手の収入の方が自分の収入より多い場合には認められる可能性が高くなっています。
2.財産分与
婚姻中に夫婦で築いた財産は共有財産となり、2分の1ずつ分けるのが基本です。
預貯金、不動産、株式、車、貴金属、家具など、すべてが対象です。
必ず詳細にリストアップして計算しておきましょう。
一方、それぞれが結婚前に貯めた貯金や相続で受け取った不動産やお金などは、特有財産となり財産分与の対象とはなりません。
3.慰謝料
前述の法定離婚事由に当てはまる行為を相手が行っていた時は、慰謝料を請求できる場合があります。
逆に、あなたが法定離婚事由に当てはまる行為をしていた場合には、慰謝料を支払う立場になることもあり得ます。
特に多いのが、不貞行為(不倫)、DV(家庭内暴力)、モラハラ(言葉の暴力)などです。
4.養育費
親権者となる場合には、相手から養育費を受け取ることが可能です。
養育費は、子どもが独立し自活ができるまでに必要とされるお金です。
養育費の額については、婚姻費用と同様に算定表に基づいて決まることが多くなっています。
5.助成金
離婚後にひとり親家庭になるようなケースでは、お住まいの市区町村による扶助や助成金を得られる可能性があります。
金額やサービスは市区町村によって異なりますので、離婚後の居住地となる自治体のホームページなどで確認しておきましょう。
🌸使用する証拠の収集
離婚協議が難航した場合には、相手を納得させるための証拠が必要です。
極力事前に収集しておきましょう。
集めておくべき主なもの
浮気、DVなどがあればその証拠となる資料(メール、画像、動画、音声など)
預貯金通帳のコピー
所得を証明するもの(給与明細、確定申告書類など)
不動産登記簿
保険に関する書類
株式関係(証券口座の明細など)
車検証
動産の明細 など
🌸離婚を切り出すのはいつが良いのか?
離婚を切り出すベストのタイミングは、置かれた環境や状況で大きく変わります。
もし、DVやモラハラなどの緊急性がある状況にあるならば、躊躇せずに行動すべきでしょう。
DV被害がある場合は、親族や友人に助けを求めたり、自治体のDV相談窓口や弁護士に相談する方法も選択すべきです。
一方、緊急性がない場合には、まずは冷静になって着実に準備を整えましょう。
例えば子どもがいる場合には、進学などのタイミングに合わせ、3月には離婚が成立していることを目指して行動する方も多くいらっしゃいます。
双方の協議でのスムーズに進まないことが想定される場合には、夏までに離婚を切り出し、調停を重ねて12月末での成立を目指し、遅れても3月末までに成立させるというようなスケジュール感がベストと思われます。
準備をしっかり行って、余裕を持ったスケジュール感の中で離婚を切り出すことが、その後の展開を優位に進めることにつながるのです。
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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。
離婚を切り出す前に準備すべきことについてまとめてみました。
実はこの準備がしっかりできるかどうかで、結果が大きく変わります。
離婚がスムーズに進むかどうか、満足できる条件が得られるかは、すべてこの準備にかかっていると言えます。
もし不安がありましたら、離婚を切り出す前に弁護士などの専門家に一度ご相談ください。