協議離婚と調停離婚のメリットとデメリット
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。夫婦が話し合いで離婚するには、「協議離婚」と「調停離婚」の2つの方法があります。違いやメリット、デメリットを十分理解した上で、自分の状況にマッチした方法を選択する必要がありますのでご参考にされてください。
🌸協議離婚・調停離婚・裁判離婚とは?
1.協議離婚とは?
協議離婚とは、夫婦が話し合いに合意することで成立する離婚です。
最も簡易で、市区町村の役場に離婚届を提出し受理された時点で離婚が成立することとなります。
離婚原因も特別な手続きや費用も必要なく、離婚届が受理さえすればそのまま簡単に成立します。
したがって感情の赴くままに急いで提出してしまい、後々トラブルとなるケースも散見されます。
例えば離婚届の提出を急ぐあまり、財産分与、養育費、慰謝料など離婚の条件について曖昧に決めてしまったり、不利な条件で合意していまうようなことも起こりがちです。
条件はしっかり決めたとしても、口約束で終わらせたり、「離婚協議書」は作成しても「公正証書」としていなかったことで、養育費の支払いなどが履行されないまま泣き寝入りとなるケースも散見されるため注意が必要です。
協議離婚の場合も後々後悔しないために、こういった手続きの詳細に関しては、弁護士などの専門家に一度はしっかり確認しておく必要があります。
2.調停離婚とは?
夫婦間で離婚協議が進まない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てて離婚を求めることになります。
日本においては、離婚訴訟を考えている場合も、必ずその前に離婚調停で話し合いをしなければならない決まりとなっています(調停前置主義)。
離婚調停は、調停委員を交えて離婚の話し合いをします。
離婚調停の手続きは、一般的には調停委員が当事者を別々に個室に呼び出し、夫々個別に言い分や気持ちを聞いて進行させていきます。
基本的にお互いに顔を合わせる必要はなく、第三者を交えて離婚の話し合いを進めていくので、夫婦二人の離婚協議に比べて、冷静に条件面も含め離婚の話が進むケースが多いです。
調停の結果、夫婦の間で離婚の合意ができれば、家庭裁判所が調停調書を作成し、離婚が成立することとなります。
しかし調停は不調となることもあります。
結局は夫婦間の合意が必要なのです。
離婚調停は弁護士をつけずに本人が行うことも可能です。
しかし基本的な知識が不足していると、調停委員の提案を受け入れるべきかどうかの判断に悩んでしまったり、納得いかないまま受け入れてしまったりというケースも発生するようです。
極力有利な条件で合意するためにも、弁護士のアドバイスを受けられる方が安心です。
弁護士に委任をすれば、弁護士が代理人として離婚調停の期日に本人と同席し、言い分を代弁することも可能です。
3.裁判離婚とは?
離婚調停が成立しなかったけれども離婚をしたい場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、離婚を求める手続きを取ります。
離婚訴訟が認められるためには、民法で定められた離婚原因が必要になり、原告は離婚原因があることを主張・立証しなければなりません。
法定の離婚原因は次の5つです(民法770条1項)。
裁判で離婚するときは次の5つの理由のいずれかに該当しなければ離婚はできません。
①不貞行為があったとき
※相手方配偶者があなた以外の異性と性交渉を行った場合
②悪意を持って結婚生活を放棄したとき
※相手方配偶者が勝手に家出をしたり、相手を家から追い出したり、生活費を家計に入れないなど
③3年以上生死不明の状態にあるとき
④重い精神病にかかったとき
⑤その他、婚姻生活を継続しがたい重大な理由があるとき
※DV、モラハラや別居により夫婦関係が破綻していると認められた場合など
裁判も本人一人で行うことも可能ですが、書面の作成や裁判官、相手方弁護士に相対することは非常に難しいものです。
現実問題として離婚訴訟は弁護士委任をお薦めいたします。
🌸協議離婚と調停離婚のどちらを選ぶべきか?
協議離婚と調停離婚は、両方共夫婦間の合意によって離婚を成立させる方法ですが、両者の間には様々な違いがあります。
協議離婚は、いつでも自由に夫婦で対話し条件を決めることができますが、調停離婚は調停委員を介するため家庭裁判所とのスケジュール調整が必要です。
また、協議離婚はスピーディーにまとまることも多いですが、調停離婚は3ヶ月から1年程度の期間を要し、弁護士に依頼すると一定のコストもかかります。
どちらを選択するかは、現在の夫婦の関係性や状況で判断することとなります。
まず、お互いに歩み寄る姿勢が感じられるのであれば、協議離婚で進めるべきです。
問題は条件面でお互いに譲歩できるかどうかです。
条件が合わない場合は、弁護士に協議離婚の代理を依頼すれば、直接交渉の必要はなくなりますし、判例などに基づいた基準をベースとなりますので、解決しやすくなります。
一方、条件面での格差があまりにも大きい場合は、調停離婚を選択すべきでしょう。
夫婦二人の話し合いが平行線となり解決までの道筋が見つからない場合は、離婚調停を通じて第三者の客観的な視点を入れた方が解決につながるのです。
離婚調停は時間も費用もかかりますが、平行線のまま時間だけが経過するよりも、解決に向け具体的に前に進む方が得策なのです。
また、調停が不調となった場合に、裁判離婚に進むことができますので、どうしても離婚したい場合には、調停から裁判という流れを見据えた上で、離婚調停を選択すべきです。
🌸調停離婚の手続きと費用
離婚調停の申し立ては、原則として相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てますが、当事者双方の合意があれば、別の家庭裁判所に申し立てることも可能です。
調停の期日になれば、家庭裁判所で調停委員が個別に聴き取りを行い、その内容を踏まえて双方に歩み寄りを促します。
離婚条件に双方が合意すれば調停は成立となり、合意内容は調停調書に記載されます。
その後、調停成立の日を含めて10日以内に、市区町村役場に離婚届を提出します。
調停離婚にかかる費用は、収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手(1000円前後)ですが、弁護士を代理人とする場合には、離婚調停に関する弁護士費用が発生します。
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🌸まとめ:困った時は弁護士にご相談ください。
協議離婚と調停離婚のどちらを選択すべきかをまとめてみました。
離婚は最終的には利害が対立しますので、お互いが譲歩し条件面でまとまるかどうかがポイントです。
もし、どのように進めるべきか迷っているようでしたら、専門家である弁護士へのご相談をお薦めします。
離婚問題に精通した弁護士に相談することで、解決への道筋が見えることが多くあります。