介護離婚!義父母の介護を理由に離婚できるか?|西宮尼崎芦屋の弁護士ブログ


介護離婚!義父母の介護を理由に離婚できるか?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。義理の両親の介護をしていると、様々な問題に直面するケースがあります。配偶者や義兄弟の支援が得られずに苦悩し、離婚しようかと悩む方もいらっしゃるかもしれません。このようなケースでは離婚は認められるのでしょうか?



介護離婚を考えてしまう要因



介護離婚を考えてしまうほど追い詰められるケースでは、周囲の支援が得られず孤立無援となっていることが多いものです。


例えば長男の嫁として同居しているケースでは、夫は仕事、義兄弟は遠方などの理由で、介護の担い手が妻一人となっていたりすることがあります。

しかも夫に理解が不足していたりすると、真剣な相談にも乗ってもらえず、孤独感に苛まれます。


義兄弟からの感謝の言葉もなかったり、逆に対応に不満を持たれていたりしたら、すべてを投げ出して楽になりたいと思うのは当然の心理です。


また、介護状態となる以前の義父母との関係性もポイントです。

元々仲が円満ではなく、ぎくしゃくした関係だった場合には、余計に介護するのがつらくなるでしょう。


夫との仲が悪い場合も同様で、なぜ嫌いな夫の両親の世話を自分だけがしなくてはならないのかと、思い悩むケースもあります。


また、一日中介護に時間を費やし、自分の趣味や楽しみが何もできない状態が続けば、本当に嫌になってしまうのも仕方がないことだと思います。

心身ともに疲れ切って、少しでも良いから自由が欲しいと感じ、介護離婚を考えてしまう方もいらっしゃるのです。



義父母の介護の法律上の義務

さて、そもそも義父母の介護をする法律上の義務は存在するのでしょうか。


一般的には、結婚をしたら義父母の介護をするのは当然だと考えらる方が多いと思いますが、実は民法には義父母の介護をする義務を定めた条文はありません。


民法877条1項「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められていますが、これは「直系血族及び兄弟姉妹」に限ったものなのです。


結婚によって生じた親族関係として「姻族」となりますので、血のつながりのある「血族」には当たらないのです。

ですので、この条文に照らせば、妻は義父母を介護する法律的な義務があるとまではいえないと解釈されます。


一方民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。

これに照らせば、夫が両親の介護を行っている場合には、妻は夫婦として協力する必要がありますが、夫がまったく介護を行わず妻に一方的に押し付けているようなケースは、この条文には当てはまらないと言えるでしょう。


しかし、民法730条では「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」と定められていますので、義父母と同居している場合は介護に関し一定の義務を負うケースもあります。




介護を理由に離婚できるのか?

それでは、介護が苦痛だという理由で離婚ができるのでしょうか?

当然の話ですが、夫婦間で離婚に同意ができている場合には離婚はできます。


しかし離婚の話し合いが合意に至らない場合には、調停や裁判に進むこととなります。

裁判に進むと、裁判所は法的に離婚が認められるかどうかを判断します。


離婚の訴えを提起することができる場合として、民法770条1項は、以下のとおり規定しており、これらの5つを「法定離婚事由」と呼びます。


1.配偶者に不貞な行為があったとき


2.配偶者から悪意で遺棄されたとき


3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき


4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき


5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき


このいずれかに該当しなければ、裁判所は離婚を認めてくれないのです。


介護が原因で夫婦関係が破綻しているようなケースでは、「5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当し離婚が可能となることも考えられます。


それでは、どんな状態が「介護が原因で夫婦関係が破綻」と言えるのでしょうか?


もし相手に協力姿勢がある場合は破綻とは言えません。

しかし相手が全く話を聞いてくれない、何も協力しようとしない、大変なはずはない、などという姿勢であり、何度も何度も撥ね付けられる状態が続くのならば、破綻と認定される可能性があります。


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介護離婚を避けるには?


しかし、もし離婚をすべきか迷っている状態であれば、いくつかの方策を試してみることをお薦めします。


まずは一人で抱え込まずに心を開いて夫に窮状を告げ、協力を依頼してみるのです。

妻が離婚を考えるまでに追い詰められていることを知れば、態度を改める可能性もあります。


また、夫の親族にも同様にサポートを依頼してみることも大切です。


そもそも三親等以内であれば介護の義務がありますので、本来当然協力すべきであり、気兼ねする必要は全くないのです。

ですから、無理をせずなるべく早い段階で兄弟に話をすることを躊躇すべきではありません。


そして周囲に協力姿勢が少しでも生まれれば、気持ちに余裕ができて前向きに考えられるようになるかも知れません。


その中で、ヘルパーの活用や、施設への入所などをみんなで検討していくような流れが生まれれば介護離婚を回避できるのではないでしょうか。


ともかく自分一人で抱え込むことだけは止めましょう。


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まとめ:困ったり迷ったりしたら弁護士にご相談ください。

介護を理由に離婚を考える方は、日々のストレスに押しつぶされそうになり、精神的に追い詰められているものと思います。

相談できる相手もなく、一人で抱え込み苦しんでいるケースが多いものです。


また、介護は家庭内の問題なので弁護士に相談することを躊躇される方もいらっしゃるでしょう。


しかし最も大切なのは、客観的な視点で現状の問題点を整理してみることです。

弁護士などの専門家に相談することで問題点が把握でき、頭の中がスッキリして今後の進む方向性が見えてくることもあります。

当事務所でもご相談を承っております。