酒乱、アルコール依存症の男性の特徴、見抜く方法、チェックリスト
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。女性の離婚原因の10位は「酒を飲み過ぎる」となっています。酒乱やアルコール依存症など、お酒にまつわるトラブルは深刻ですので、できれば交際期間中に相手にこれらの傾向がないかどうか確かめておく必要があります。
目次
🌸「酒を飲み過ぎる」は離婚原因の10位
🌸なぜお酒の問題が離婚につながるのか?
🌸酒乱、アルコール依存症の男性のチェックリスト
🌸酒乱やアルコール依存症の特徴
🌸まとめ:実態に応じた対応策を検討しましょう
🌸「酒を飲み過ぎる」は離婚原因の10位
最高裁判所が開示している令和元年度司法統計のデータ※によれば、夫婦が離婚に至る原因は男女とも「性格の不一致」が第1位で、女性のみの申立て相談件数では17,242件となっています。
女性の2位は「生活費を渡さない」が12,943件、3位は「精神的に虐待する」が11,904件、4位「暴力を振るう」が9,039件、5位「異性関係」が6,800件、6位「浪費する」4,298件、7位「家庭を捨てて省みない」3、194件、8位「性的不調和」2、893件、9位「家族の親族と折り合いが悪い」2,850件、10位「酒を飲み過ぎる」2,774件と続いています。
※「婚姻関係事件数申立ての動機別申立人別全家庭裁判所」
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/274/011274.pdf
(注)申立ての動機は,申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計。
この結果をよく見ると、8位~10位はほとんど件数に差がなく、また他の理由と異なり日常的な嗜好の問題がこのような結果につながっているのは、驚くべき事実であると感じます。
なぜお酒が離婚にまでつながるようなトラブルに発展するのでしょうか?
🌸なぜお酒の問題が離婚につながるのか?
一つは改善が難しいことです。
例えばアルコール依存症は、自然に治ることは期待できず、専門機関などでの治療が必要です。
アルコール依存症で治療が必要な人は推定で100万人を超えていると言われていますが、治療を受けている人は10万人に満たないそうです。
わかっていてもなかなか根本治療に向かわない人が多くいますので、解決がとても難しいのです。
二つ目の理由は、モラハラやDVにつながりやすいという点です。
お酒を飲み過ぎると感情の抑制が効かず、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする例が後を絶ちません。
本人は覚えていないと主張することも多く、一旦反省して二度としないと謝罪したとしても、また同様のことを繰り返します。
そして三つ目の理由は、子どもたちなど家族への悪影響です。
教育上の影響は勿論、酒が原因で家計が圧迫されるケースもあります。
また、アルコール依存症の夫が配偶者に暴力を振るっているのを子供が目撃すると、子供の精神面が不安定になる可能性が高くなり、将来アダルトチルドレンになるリスクもあります。
※アダルトチルドレンとは、元々アメリカでアルコール依存症の親のいる家庭で育った成人を指す言葉であり、そこから派生して「子供の頃、家庭環境などが原因で精神的に不安定な状態で育ち、成人になっても生き方に悩んでいる人」を言います
このようにお酒が及ぼす悪影響は家庭内全般に波及するため、改善が望めないと絶望した配偶者が離婚に踏み切ることが多くあるのです。
🌸酒乱、アルコール依存症の男性のチェックリスト
離婚につながりかねないお酒の問題は本当に深刻です。
それでは、あなたのパートナーにはこんなところがないかチェックしてみてください。
□以前より、酒量が増えてきた
□最近、お酒を楽しんで飲んでいない
□ストレスがたまりやすい職業に就いている
□仕事を心から好きで、楽しんでいるようにはみえない
□家系的に酒乱の気がある
□趣味がなく、ストレスを発散するのは主にお酒である
□普段は、どちらかと言えばおとなしく、思ったことを言えないタイプである
□お酒が原因で、仕事に穴をあけたことがある。
該当する項目はあったでしょうか?
もし複数のチェック項目があった場合は、特に要注意です。
🌸酒乱やアルコール依存症の特徴
それでは酒乱やアルコール依存症の男性の特徴をまとめてみます。
特徴① 食事やお酒を楽しんでいない
たまにしか飲まないにもかかわらず、飲み過ぎてしまい、暴言を吐いたり暴れたりするのは「酒乱」です。
一方、アルコール依存症は、毎日大量の酒を欲します。
酒乱やアルコール依存症の方の共通の特徴としては、食事やお酒を心から楽しんでいないことが挙げられます。
ストレスから逃げる手段としてお酒を飲んでいるので、味なんてわからない、とにかく嫌なことから逃げたいと思っていて、その手段としてお酒を飲んでいるのです。
パートナーが「楽しいお酒」を飲んでいないと感じる場合は、要注意です。
特徴② 普段は温厚、おとなしい
お酒が入ると大暴れするタイプは、日頃はうって変わって温厚で礼儀正しい人が多いです。
普段は大人しい性格で、優しく気も利きますし、「お酒さえ飲まなかったらいい人なのに……」と言われることもよくあります。
特徴③ 高度のストレスにさらされている。
酒乱やアルコール依存症に陥ってしまう人は、常日頃から高度のストレスにさらされていることが多いです。
特徴①でも述べましたが、彼らはストレスから逃げる手段として、お酒を飲んでいるのです。
お酒を飲んでいる瞬間は嫌なことを忘れられますが、ストレスそのものは取り除かれていませんから、またお酒を飲むという悪循環に陥ってしまっているのです。
根本のストレスが何か、取り除く方法はないかを考えることが先決でしょう。
特徴④ 趣味などストレスを発散する場がない
酒乱やアルコール依存症の人は、無趣味なことが多いです。
ストレスを発散する場がないがために、どんどんストレスをため込んでしまうのです。
夢中になれる趣味があれば、依存症に陥ったりしません。
結婚前に趣味が何かを聞くことは、お見合いの常套句のように言われていますが、酒乱やアルコール依存症に陥っていないかを確かめるためにも有効だったりします。
特徴⑤ なぜか一人飲みばかり
すでに職場や友人の間で「酒乱」として有名になってしまっている人は、周りの人にさまざまな迷惑をかけていることが予想されます。
本人は覚えていませんが、周囲の人は「二度と飲みに行きたくない」と思っている可能性が高いです。
自然に飲みに誘われなくなりますから、一人飲みが増えていきます。
なぜかいつも一人飲みばかりの人には注意しましょう。
特徴⑥ 親が酒乱気味である
一滴もお酒が飲めない体質の人がいますが、遺伝的要素が大きいと言われています。
同様に、親が酒乱の気がある場合、子どもも酒乱というケースがあります。
早めにご両親と食事をして、どんなお酒の飲み方をするのか、本人のみならず両親もチェックすることも大切かもしれませんね。
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まとめ:実態に応じた対応策を検討しましょう
ここまで述べて来たように、お酒の問題を軽く考えることは危険です。
常に離婚原因にランクされ続けているのです。
その意味では、酒乱やアルコール依存症の傾向はしっかりチェックし、パートナー選びの基準の一つとすべきでしょう。
しかし結婚後であったとしても、「酒乱」や「アルコール依存症」は「病気」の一種ですので、専門家の力を借りてパートナーと一丸となって病気を治そうとする選択肢もあります。
前提として、パートナーがお酒に溺れる原因は何かをつきとめ、ストレスであればストレスを軽減するように一緒に考えることが必要でしょう。
実態に応じた対応策を検討することがスタートですので、まずはチェックから始めてみましょう。