夫婦・婚姻関係の破綻=法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」とは?
兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚の話し合いが進まない場合、調停や裁判を行うこととなりますが、離婚が認められる「法定離婚事由」の中に、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という項目があります。一体どんなケースを指すのでしょうか?まとめてみました。
目次
🌸法定離婚事由とは?
🌸「婚姻を継続し難い重大な事由」とは?
🌸夫婦(婚姻)関係が破綻していると認められるための証拠は?
🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士にご相談ください。
🌸法定離婚事由とは?
裁判に進むと、裁判所は法的に離婚が認められるかどうかを判断します。
離婚の訴えを提起することができる場合として、民法770条1項は、以下のとおり規定しており、これらの5つを「法定離婚事由」と呼びます。
1.配偶者に不貞な行為があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
このいずれかに該当しなければ、裁判所は離婚を認めてくれないのです。
配偶者が離婚を拒絶しているケースにおいては、これら法定離婚事由のいずれかに該当する状況なのかどうかがポイントとなりますので、現在の自分の状況がどの離婚事由に当てはまるのかを検討しておかなくてはなりません。
1~4に該当しない場合は、5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかがとても重要となってきます。
🌸「婚姻を継続し難い重大な事由」とは?
民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」は、夫婦・婚姻関係が破綻している状態を指します。
裁判所が夫婦・婚姻関係が破綻しているかどうか判断するにあたっては、夫婦の行為や態度、子どもの有無や状態、婚姻継続の意思があるかどうか、健康状態や資産状況、それぞれの性格など、婚姻生活全般の状況を考慮することになります。
例えば、夫婦関係の破綻が認められやすい状況には以下のようなものがあります。
1.DV(家庭内暴力)・モラハラ(言葉の暴力)
離婚原因で最も多いものは「性格の不一致」ですが、妻からの申し立てでそれに次いで多いのは、DV・モラハラと言われています。
配偶者からのDV・モラハラは、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることが多い事例です。
勿論その程度により判断が分かれることがありますので、DV・モラハラの程度、回数、期間などの具体的な状況を考慮した上で認定されるかどうかが変わります。
例えば、軽度のDV・モラハラであったとしても、何度も何度も繰り返し行われれば、夫婦関係の破綻と認定されることも十分あり得ます。
2.長期間の別居
民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されています。
そのため、正当な理由なく長期間別居をしている状況が継続していれば、夫婦の基本的な義務に反する状態と見做されるため、夫婦関係の破綻と認定されることとなり得ます。
別居の期間については、3年~5年が一応の目安となっていますが、別居期間だけで判断されるのではなく、その間の関係性などを含め総合的に判断されます。
3.不就労・借金・浪費癖などの金銭トラブル
配偶者が仕事をしないなど、生活能力が欠如している場合なども、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する場合が多いと言えます。
夫婦の協力扶助義務に違反するものだからです。
これらが原因となり、夫婦関係が破綻し回復の見込みがなければ、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
また配偶者が、クレジットカードで多額の出費を繰り返したり、無断で多額の借金を重ねたりするようなケースも、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断される場合があります。
4.セックスレス
セックスレスも夫婦関係の破綻に認定されることがあり得ます。
特段の理由なく長期間性交渉を拒否し続けたようなケースは、婚姻関係を継続し難い重大な事由に該当する場合があるのです。
5.過度の宗教活動
夫婦間においても、宗教活動の自由は尊重されます。
しかし、夫婦の一方が過度に宗教活動に専念したあまり、夫婦関係が極度に悪化し、婚姻関係が破綻したようなケースでは、婚姻を継続し難い重大な事由と認定されることがあります。
🌸夫婦(婚姻)関係が破綻していると認められるための証拠は?
裁判所に夫婦(婚姻)関係が破綻していると認めてもらうためには立証できる証拠を集める必要があります。
1.DV・モラハラ
DVの証拠:配偶者からの暴力でできた傷などの写真、医師の診断書、カルテ、日記(暴力を受けたことを詳細に記載したもの)
モラハラの証拠:発言を録音した音声データ、日記(言われた内容を詳細に記載したもの)
2.長期間の別居
住民票(別居時に住民票を異動した場合)
賃貸契約書(別居し新しい住所に転居したことの証明)
3.不就労・借金・浪費癖
不就労:配偶者の所得証明書
借金・浪費癖:借用書、クレジットカードの利用明細書、消費者金融からの督促状
4.セックスレス
日記
メール・LINE(性交渉を求めたが相手方から断られたやりとり)
5.過度の宗教活動
日記(具体的な配偶者の宗教活動の内容など)
寄付の履歴(通帳の写しなど)
当該宗教のパンフレットなど
※これらがあれば証拠として有効ということでなく、あくまでも総合的に判断される材料の一つという位置づけです。
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🌸まとめ:迷ったり困ったりしたら弁護士にご相談ください。
法定離婚事由のうち、770条1項5号の夫婦(婚姻)関係の破綻は、ほかの4つの法定離婚事由と比べて抽象的な内容となっています。
そのため、裁判所に離婚を認めてもらうには、根拠となる事情を客観的かつ具体的に主張する必要があります。
裁判所は一つの事柄だけではなく、様々な状況を総合的に判断し結論付けますので、証拠の揃え方や主張の仕方などを十分に検討した上で道筋をきちんと立てて臨む必要があります。
迷ったり困ったりした場合は、弁護士などの専門家へご相談されることをお薦めします。
当事務所でも承っておりますので、お気軽にご連絡ください。