単独親権制度、共同親権制度とは?|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ


単独親権制度、共同親権制度とは?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。日本では離婚した際にどちらかの親を親権者に定める単独親権制度を採用しています。しかし海外では離婚後も両方の親が親権を持ち養育を行う共同親権制度を採用している国が多く、今後親権制度をどうするべきかが論議となっています。


目次

🌸親権とは

🌸「単独親権は違法」と提訴

🌸共同親権制度とは

🌸海外での共同親権制度

🌸共同親権制度導入への問題点

🌸まとめ:親権は最も切実な問題です



🌸親権とは

親権は、未成年者を監護、教育して財産を管理するために、父母に与えられた身分上および財産上の権利及び義務です。

親権には以下の3つの内容があります。


1.身上監護権

子どもの身の周りの世話をし、躾や教育を行う。

2.財産管理権

子ども名義の預貯金等の財産管理を行う。

3.法定代理権

子どもが何らかの契約の当事者となる際に、子どもの代理として契約を締結する。


日本においては、離婚する際にどちらかの親を親権者として離婚届に記載することとなっています。

離婚は、親権者を決定しなければ仕組みなのです。



🌸「単独親権は違法」と提訴

日本は離婚した際に、父母どちらか一方が親権を持つ「単独親権制度」です。

しかし実は海外においては、離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権制度」を採用している国がとても多いのです。

この単独親権制度を巡り2020年10月21日に、東京都、群馬、神奈川、山梨の30~50代の男女6人が東京地裁に、国に1人当たり150万円の損害賠償を求め提訴しました。

単独親権制度が憲法が定める法の下の平等や、幸福追求権に反するとし、「虐待などの特殊なケースを除き、離婚後も両親が共同で子どもの成長を見守るべきだ」と主張しているのです。

原告の6人は、離婚後相手方の強制的な連れ去りやDV(ドメスティックバイオレンス)などが原因で子どもと離れ離れになり親権を失ったとのことであり、とても切実な訴えであると思います。

※参考元:2020年10月21日共同通信


🌸共同親権制度とは

共同親権とは「子に対する親権を父母の双方が持っていること」又は「父母が共同し、合意に基づいて子に対し親権を行うこと」を指します。

日本が採用している単独親権制度では、どちらか一方が親権を持ち、他方は面会交流や養育費について約した内容に従い養育の義務を果たすこととなっています。

しかし実態では、親権を取れなかった親は子どもとのつながりが薄れ、交流が絶たれるケースも多く、養育費不払いの原因の一つとなっているとも指摘されています。

離婚後も一緒に子供を養育する共同親権制度であれば、この問題を解決する一助となる可能性が高いため法改正への期待が高まっており、前述の訴訟もこの流れの一環ではないかと推測されます。


🌸海外での共同親権制度


共同親権においては、子供を養育する権利を両方の親が共有します。

具体的な内容については各国の法律によって異なっており、共同親権をどのように行使するかも個々の事案により変わってきます。

例えば、養育に関する意思決定を双方の親がその都度協議して進める方法もあれば、タイムスケジュールを決めて養育自体を分担する方法もあるのです。

タイムスケジュールを決めるケースでは、一週間、一か月というような単位で子供が父母の家を行き来する方法や、平日は一方の親の元に住み週末は他方の親の元に住む方法などが用いられています。

法務省の調査によれば、インド及びトルコでは日本と同様離婚後は単独親権のみが認められていますが、その他の多くの国では単独親権だけでなく共同親権も認められているとのことです。

運用には国ごとに差異があり、裁判所の判断等がない限り原則として共同親権としている国(ドイツ、オーストラリア等)、父母の協議により単独親権とすることもできる国(カナダのブリティッシュコロンビア州)、父母のいずれもが、それぞれの親権を単独で行使することができる国(イギリスのイングランド及びウェールズ、南アフリカ)などと判断が分かれています。

尚、共同親権制度を採用している国は以下です。

アメリカ(ニューヨーク州、ワシントンDC)、カナダ(ケベック州、ブリティッシュコロンビア州)、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、インドネシア、韓国、タイ、中国、フィリピン、イタリア、イギリス(イングランド及びウェールズ)、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、ドイツ、フランス、ロシア、オーストラリア、サウジアラビア、南アフリカ

※参考元:離婚後の共同親権について― 離婚後の子の養育の現状と共同親権に関する議論 ―参議院常任委員会調査室・特別調査室



🌸共同親権制度導入への問題点

少子化や共働き世帯の増加、父親の育児参加など、子どもの養育を取り巻く環境は大きく変わってきています。

これらを背景に離婚時の子供に関する問題は深刻化を増し、連れ去り、訴訟で虚偽のDVを訴える行為など、問題のある行動も増えつつあります。

このような事態を打開するためにも、共同親権制度への移行が求められてるという声がある一方、共同親権制度となったとしても父母間の対立は緩和できず、共同での養育の意思決定は容易ではないため、争いが日常化することで却って問題が悪化するという意見もあります。

また、共同親権制度のデメリットとしてDV(ドメスティックバイオレンス)、児童虐待などの問題も指摘されています。

共同親権の場合は、子どもに関する重要事項は協議し決定するプロセスが必要となるため接点を持たざるを得ず、DVなどの被害の継続や拡大につながりかねないと懸念されているのです。

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🌸まとめ:親権は最も切実な問題です

離婚問題の中で、親権に関する争いは最も切実です。

双方簡単に譲ることのできない問題であり、とことんこじれてしまうことも多いのが実態です。

現在の日本の単独親権制度の一番の問題点は、親権を取れなかった親が離婚後に子どもとの関係性が薄れ没交渉となってしまうことではないかと感じています。

このことが養育費不払いなどにつながるケースが多いことも実感しています。

一方離婚原因がDV、モラハラや児童虐待などであった場合は、被害を受けていた側は二度と接点を持ちたくないと考えるのは当然のことであり、今後日本において共同親権制度を導入する際には、共同親権者とすべきでないと判断される親については、明確に除外する規定を設ける必要があるものと考えております。

今後早急に議論が進み、様々な問題点を踏まえた上で、より良い制度が構築されることを切に願っています。