離婚協議時に子どもの連れ去りがあった時の対処法|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ


離婚協議時に子どもの連れ去りがあった時の対処法


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。離婚成立前に相手が子どもを連れて別居してしまうケース=連れ去りは、離婚協議時によく見られる事例です。こんな時は一体どう対処したら良いのでしょう?まとめてみましたのでご参考にされてください。


目次

🌸連れ去りは多くある事例です

🌸すぐに法的手続きを

🌸法的手続きとは?

🌸法的手続きの具体的な流れ

🌸まとめ:連れ去りがあったらすぐ専門家に相談を



🌸連れ去りは多くある事例です

離婚成立前に、夫婦のどちらかが子どもを連れて別居してしまうケース=連れ去りは、離婚協議中によく見られる事例です。

家に帰ったら妻(夫)と子どもが忽然と姿を消してしまい、慌ててご相談に来られる方もいらっしゃいます。

このような事態が発生した場合、いったいどう対処したらいいのでしょうか?



🌸すぐに法的手続きを

このようなことが起きた場合は、子どもの引き渡し、監護者の指定を求めすぐに法的手続きをとることをお薦めいたします。

相手方が家を出て別居し子どもとの同居を続け、一定の環境を整備してしまうと、その後の親権争いが不利となるケースが多いため、スピーディーな対応が必要です。

「事を荒立てたくないので、いずれ離婚訴訟で親権を主張すればいいのでは」などと躊躇することは危険です。

別居時の監護者が、親権を巡る争いではかなり有利となることが多いのです。

これは、家庭裁判所は「子どもの福祉」という観点から、親権争いの際に子どもの環境をなるべく変えたくないという方向に進みがちであるためです。

例え連れ去りであっても、一定の環境に子どもが馴染んでしまうと、同居者が親権を取れる確率はかなり高くなってしまうのです。



🌸法的手続きとは?

1.子どもの引渡しを求める調停・審判


2.監護者の指定を求める調停・審判


3. 1と2の保全処分(仮の引き渡し)

※1と2の結果が出るまでには一定の時間がかかるため、子どもの生命・身体に危険が及ぶおそれがある場合などに、緊急に引渡しを求める手続


4.子どもの引渡しの強制執行

※相手方が子どもを引き渡さない場合、裁判所を通じて強制的に引渡しを求める方法。


1~3は弁護士の間では、「3点セット」と呼ばれています。

監護者として指定されたとしても、引渡しをが為されなければ実際の監護(同居して世話をする)はできないため、3つの手続を一緒に申し立てる必要があるのです。



🌸法的手続きの具体的な流れ


1.調停か審判か

夫婦のどちらを監護者とするかについて合意が可能であれば、調停が成立することとなります。

しかし、子どもの連れ去りをするくらい険悪な夫婦関係である場合、お互いに監護権を主張して譲らないことが多いため、調停では決着がつかないケースがほとんどです。


そうした場合は「審判」となり、夫婦のどちらを監護者と指定するかは裁判官が決定します。


2.調査官による調査

夫婦のどちらが監護者となるべきかを裁判官が判断するため、家庭裁判所の職員が調査官(家庭の問題について調査する専門官)として具体的に調査を行います。

夫婦それぞれの家庭を訪問し事情聴取したり、実際に子どもと面談し、精神状態・健康状態の確認したりして、綿密に情報を集めます。

子どもがある程度の年齢に達している場合は子供の意思の確認も行いますし、ケースによっては保育園、小学校等にもヒアリングをすることもあります。


3.監護者を決めるポイント

家庭裁判所の考え方の基本は、親権者の決定と同様の「子供の福祉」という観点です。

乳幼児の場合は母性的役割を果たすもの=通常は母親が優先されます。

しかし「母性的役割」は性別ではなく、子どもにきめ細やかな対応ができることを指しますので、父親が監護者に決定されるケースもあります。

また、一定の期間別居が続いている状態では、子どもが環境に慣れてしまうため、裁判所はその状態を変える決定をすることは少ないです。

子ども自身の精神的な負担をなるべく避けたいという意思が働くからです。

そして15歳以上の子どもの場合は、子ども自身がどちらの親と暮らしたいかという本人の意見が尊重されます。

※15歳に満たない場合でも、中学生以上は子どもの意見は優先されやすいです。

また、家庭裁判所は兄弟姉妹がいる場合はなるべく同じ親の下で育てるべきという考え方も有しています。

もう一つの観点は監護能力です。

子どもを育てる意欲や、環境を整える能力や経済力があるかどうかという点です。

しかし、夫側が自分の経済力を強く主張するケースでは、裁判所はこれをあまり重視しない傾向があります。

それよりも子どもの環境をいたずらに変えないことを選択する場合が多く、子どもの気持ちを優先的に考え判断します。

確かに養育費や婚姻費用を夫側が負担すれば、経済的な格差は補われるため、主たる論点にはなりづらい面があるのです。

そして、同居していない方の親に対し、同居している親がきちんと面会交流を認めているか=寛容性の原則や、無理やり暴力的に子どもを連れ去るなどの法的に問題のある行為がなかったか=法的手続きの順守という点も考慮されます。

フェアーに法的問題が発生しないような対処をしておかないと、後々監護者の指定で不利に働くことがありますので、十分な注意が必要です。


4.不服申立て

家庭裁判所の審判に不服がある場合は、即時抗告という不服申立ての方法により、高等裁判所に判断を仰ぐこととなります。


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🌸まとめ:連れ去りがあったらすぐ専門家に相談を


ここまで述べてきたように、子どもの連れ去りがあった時の対処は、法的観点や今後の家庭裁判所の判断の見通しなどを踏まえ、迅速に行う必要があります。

感情に押され強引に事を運ぶと、後々大きく不利な状況を作るリスクもあり、この局面では的確なアドバイスを受け行動する必要があります。

ですので、このような状況が発生した場合は、たくさんの事案を扱って来た離婚問題に精通した弁護士にまずは相談されることをお薦めします。

当事務所でも承っておりますので、まずはご連絡くださいませ。