結婚契約書(婚前契約書)とは?|西宮神戸尼崎の弁護士ブログ


結婚契約書(婚前契約書)とは?
離婚しない円満な家庭を築く切り札!?


兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所代表弁護士の後藤千絵です。3組に1組が離婚する時代と言われていますが、結婚前に事前に対策をして離婚を防止する方法はないのでしょうか?そんな観点から今、「結婚契約書(婚前契約書)」が静かに広がっています。その内容についてまとめてみました。


🌸目次

🌸離婚原因の第一位は「性格の不一致」

🌸価値観の相違やすれ違いが原因

🌸結婚契約書・婚前契約書とは

🌸結婚契約書(婚前契約書)のひな型

🌸まとめ:結婚契約書(婚前契約書)は転ばぬ先の杖



🌸離婚原因の第一位は「性格の不一致」


いつの世も離婚原因のランキングでは不動の第一位が「性格の不一致」です。

さしたる大きな理由はないものの、何となく合わない、一緒にやっていくのが難しいということで離婚を決断する人が多いのです。

しかし公表されている離婚原因のランキングは、最高裁判所が開示している「年度別司法統計のデータ(婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別)」がベースとなっていることが多いため、具体的な離婚理由を言いたくない人がこの「性格の不一致」を選択することで実際よりも増えてしまっている側面もあるようです。


とは言うものの、この理由が圧倒的に多いのは事実であり、大きな理由なく別れる夫婦が多いのが現状なのです。

さてそれでは、この「性格の不一致」による離婚を防ぐ方法はないのでしょうか?


🌸価値観の相違やすれ違いが原因

結婚後に平和で幸せな結婚生活を継続して行くためには、日々の生活での小さな不満やすれ違いを解消して行くことが重要です。

結婚生活は新たな価値観を二人で作り上げる積み重ねでもあるのです。

二人は生まれも育ちも違いますので、考え方や生活習慣が違うのは当然です。

一緒に生活してみて(あれ?こんな風に考えるんだ)と驚くことも多いと思います。

しかしそれを我慢したり放置することで徐々にすれ違いが生まれ、最終的には「性格の不一致」というトップの離婚原因に結びついてしまったりすることもあるのです。

それではこういった溝が生まれるのを防ぐ方法はないのでしょうか?

良い具体的な方法があります。

それは話し合って「約束・取決めをする」というものです。

口頭の約束でも良いのですが、文書を作ることでより効果は大きくなります。

実は既に、このことに関連する取組みが行われていますのでご紹介して行きます。


🌸結婚契約書・婚前契約書とは

欧米でPrenuptial agreement(プレナプシャルアグリーメント)=プレナップという婚前契約書を交わすケースが日本より遥かに多いと言われています。

プレナップは結婚後の夫婦間の約束事を結婚前の段階で明確にして契約書の形にしたものであり、欧米人らしい合理的な考え方に立ったやり方だ思います。

日本においては未だこのような習慣は普及しておらず、打算的と映るかも知れませんが、実は約束事を文書化することはとても意味のあることなのです。

口頭でやりとりするより、具体的な文言をすり合わせ文書を交わすことは何十倍も効果的に履行されます。

また法律的には、結婚・入籍が『両者の婚姻意思の合致』することで成立するため、結婚の申し込みと承諾は男女間の契約行為のひとつであるとも言えますので、契約書を交わすことに何も問題はありません。

一般的には契約書には、結婚生活するうえでのルール、お金の問題や不倫や浮気に関する約束事などを盛込み盛り込みます。

契約書に記載する項目の例を挙げてみます。

・異性と二人きりで会わない、不貞行為をしない

・無断で借金はしない

・家事、育児を一方に任せず、平等に負担するよう努める

・嘘や隠し事をしない

・ギャンブルはしない

・暴力行為をしない

・家計の管理方法

・貯蓄に関する決め事


この他にも気になることや相手に対し望んでいることを何でも良いので記載しておくができます。

そして違反した場合のペナルティについても記載しておきます。


DVや浮気、借金問題など、離婚原因のメインとなるの項目と合わせ、結婚生活における様々なすれ違いを防止するために価値観を共有しておくことは、正に転ばぬ先の杖と言えると思います。


🌸結婚契約書(婚前契約書)のひな型

【結婚契約書・婚前契約書のひな型】を掲載しておきます。


結婚契約書

夫○○○○(以下「甲」)と妻△△△△(以下「乙」)は、令和○○年○月○日に婚姻届を提出する予定である両者の婚姻について以下の通り契約を締結する。


【夫婦としての在り方】

第1条 甲と乙は互いにどんな時も思いやりを大切にし、それぞれの生活が充実するようお互い支え合うこととする。


【家事について】

第2条 甲と乙は家事をそれぞれの役割に分担して行うものとする。

第3条 甲と乙の具体的な家事の分担は以下とする。

・食事は休日は甲が、平日は乙が作り、片付け、食器洗いは休日は乙が、平日は甲が行う

・ゴミ出し、水回りの掃除は甲が、洗濯、室内清掃は乙が行う

第4条 上記の分担はあくまで目安であるため、いずれかが都合がつかない時、また、いずれかに時間に余裕がある時には互いに支え合って行う。


【仕事について】

第5条 甲乙はそれぞれお互いの仕事を尊重し、各々の立場に立ち思いやりを持ってサポートし合うものとする。

第6条 甲と乙は仕事での帰宅が遅れる場合にはその旨を連絡することとする。

第7条 甲と乙は年次有給休暇については事前に話し合い、極力一緒に取得するものとする

第8条 甲と乙は職場を退職する際や独立起業する際は、事前に相談し、協議のするものとする。


【子供、育児について】

第9条 甲と乙は結婚後1年後以降を目途に、子作りするものとする。

第10条 育児は分担し共同で行うものとすし、乙のみならず甲も必要に応じて育児休暇を取得するものとする。

第11条 育児は子供の意思を最大限尊重し、才能を伸ばす方針で行う。


【家計について】

第12条 甲と乙の婚姻する以前から保有している財産については共有せずにそれぞれに帰属するものとする。

第13条 甲と乙は、お互いに収入の金額を把握できるようお互いに伝えあい、増減時した際にも申告することとする。

第14条 甲と乙はそれぞれの収入の内、50%ずつを2人の家計費の口座に振込むこととする。

その合計を生活費として、家賃、公共料金、食費、貯蓄に充当する。

第15条 各自の衣類、趣味、交友に費やす費用はそれぞれで負担しするものとする。

第16条 環境の変化等により第14条の割合が不都合となった場合には別途協議の上変更する。


【趣味での支出について】

第17条 甲の趣味であるゲームについては、ゲーム購入費や課金での金額合計で月の出費の上限は2万円とし、この金額は甲の管理する財産から行う。尚、甲乙の協議により合意が得られた場合はこの限りでない。

第18条 乙の趣味であるアーティストの応援活動については、、ライブチケット代、CD代、その他グッズ代を含めて月の出費の上限は2万円とし、この金額は乙の管理する財産から行う。尚、甲乙の協議により合意が得られた場合はこの限りでない。

第19条 以上の他でも、2万円以上の出費については事前に甲乙協議の上支出するものとする。


【親族・知人との親交について】

第20条 甲と乙はお互いの両親などの親族・知人・友人に対し、心を開き友好的に接することで良い関係を築くよう継続的に努力する。

第21条 甲と乙は1年に最低1回程度は、一緒に互いの両親の家訪れるものとし、訪問回数の偏りが出ないよう配慮する。


【禁止行為について】

第22条 暴力行為は決して行わないこととする。

第25条 異性と二人きりでは会わないこととする。

第23条 重大な嘘や隠し事はしないこととする。

第24条 競馬、競輪、競艇、パチンコ、スロットなどのギャンブルは行わないこととする。

第25条 株式投資、FX投資、不動産投資などは行わないこととする。

第26条 カードローン、個人ローンなどの借金はしないこととする。

第27条 第22条~26条の禁止行為に違反した場合は、離婚の協議を行うものとする。

第28条 離婚時の慰謝料は離婚の原因を作出した者が支払うこととする。


【その他について】

第29条 甲と乙は互いの誕生日と結婚記念日を一緒に祝うものとする。

第30条 本契約書の内容を変更する必要性が生じた場合には、協議の上双方の合意をもって行うこととする。

甲       住所

        氏名            印


乙       住所  

   氏名                 印


作成日        令和  〇年  〇月  〇日



🌸結婚契約書(婚前契約書)は法的に有効なのか?

さて、この結婚契約書(婚前契約書)は法的に有効なのでしょうか?

まず、民法第754条では「夫婦間でした契約は、いつでも取り消すことができる」とされています。条文は以下です。

第754条【夫婦間の契約の取消権】

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

ですから契約は結婚前に行う必要があります。

 しかし法的拘束力がある契約は、実際はお金や財産に関するものに限定されるというのが一般的な解釈であり、例えば以下のようなものが該当します。

・婚姻前と婚姻後の財産に関し夫婦どちらかの特有財産とするかそれとも共有財産とするか

・財産の使用収益と管理方法

・同居中や別居後の婚姻費用の分担方法

・夫婦それぞれに債務がある場合の負担の仕方

・離婚の際の慰謝料、財産分与、養育費


 ですから、結婚契約書を交わしたとしても金銭や財産に関するもの以外は、法的拘束力があるとは言えないのです。

それでも二人で価値観や思いを整理し明文化しておくことは、心理的ハードルを最大限にする効果があり現実的にはとても有効な手段と思われます。

誰しも契約として約定したことの重みは心の中にずっしりと感じるものですし、不満の芽を摘む効果はかなり大きいものがあるはずです。


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🌸まとめ:結婚契約書(婚前契約書)は転ばぬ先の杖

結婚契約書(婚前契約書)についてまとめてみました。

日本ではまだまだ馴染みのない手法ですが、事前にトラブルを防ぐ合理的なやり方であることは間違いありません。

何より、二人で結婚後のルールを話し合う機会を持つことは、その後の結婚生活を円満に送るための大きなヒントとなるでしょう。

結婚を控えている方は、一度ご検討してみてはいかがでしょうか?